植物の本「樹木たちの知られざる生活」「英王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ」や動物の本「動物たちの内なる生活」を過去のブログで紹介しました。今回は昆虫です。「蟲愛づる人の蟲がたり」(監修:町田龍一郎 発行所:筑波大学出版会)です。 虫というと嫌がる方が多いですね。 この「蟲」という字は虫がうじゃうじゃいるようで気味が悪い字です。 少し脱線します。私は小学校の頃、蝶大好きな友達に誘われて蝶を採集した覚えがあります。通常標本は防腐剤を注射で注入して乾燥させてつくりますが、彼の場合胴体から羽だけ切り離して2枚のガラス板に挟み周囲をセロテープで固定する独自の方法でした。今思えば斬新な方法ですね。標本が破損する心配もなく、積んでおけるので取扱が楽です。私も真似して蝶を採集しましたが、ミヤマカラスアゲハ(写真)を採った時には、その綺麗な姿に感動したものです。
資料ご覧ください。 → 蟲の話
p.1 脊椎動物の骨格は内部にありますが、昆虫は外にありますので、変態は非常に大変な作業のようです。「クチクラ」という液体を分泌して硬化すると硬い骨格になります。昆虫は酸素を外骨格にある気門から取り込んで、左下の気管(青い線)に沿って体中に酸素を運びます。トンボが羽化しているのが左上の写真です。羽化の際にこの気管内のクチクラを抜かないと気管内が空洞になりません。写真の赤枠内にある白い糸状のものが抜き取ったクチクラです。羽化が大変なことがわかりますね。 蛹(さなぎ)の中では液体の「クチクラ」がどろどろの状態になっていて、硬化すると成虫の形に変身するようです。今まで、幼虫から成虫の姿にどうやって変身するのかと思っていたので、納得です。まるで、3次元プリンターあるいはUV硬化の樹脂で成形しているようです。 昆虫の外骨格の中は血液類似物質で満たされていて、ポンプで循環しているようです。
p.2 左上はアミカの幼虫に腹側からみたところです。小さな吸盤があります。 右上はアワフキムシの幼虫です。幼虫が排出する液中には油脂とアンモニアが含まれていて、「ケン化」という反応でアンモニウム石鹸が生成して泡になるそうです。この泡は外敵から幼虫を保護してくれます。 アブラムシは春先から夏までメスだけの「単為生殖」でどんどん子を産むそうです。おなかの中にいる子の中に既に孫がいる場合もあるそうで、1匹から1.387匹/日増えるので1か月では1.387^30=18,293匹/月に増える計算となります。秋以降はオスとの「有性生殖」で卵にして越冬します。 「単為生殖」の子はクローンなので、数多く産まれますが弱く、種を残すためには遺伝子の交配が必要のようです。上手いシステムです。
p.3 アケビコノハの幼虫と成虫です。幼虫は通常真中の姿ですが、威嚇する時は左の写真のようになります。大きな目の顔のように見えます。可愛らしく見えますが、自分を大きくみせようとしています。 成虫の2枚の羽は木の葉のような形状をしているので、下2枚の写真をみると紛れてわからなくなりますね。擬態です。
p.4 上2枚は「シャチホコ」という命名通り幼虫はシャチホコの形になっています。 下2枚は何れも目玉が模様の蛾です。 蛾にはこのような紋様のものが多いですね。 蝶と蛾はよく似ているのに、なぜ蝶が好まれるのでしょうか? 鱗粉が嫌いなので、いずれも嫌だという人もいますが。
p.5 「エゴヒゲナガゾウムシ」と「シュモクバエ」のオスは何れも目と目の間が広いほどメスにもてるそうです。 人間の場合はいかがでしょうか?
昆虫も植物同様に、生きていくためにいろいろ戦略を練っているようです。