長沼伸一郎さんの本は、私が学生の頃からの愛読書です。未だに何度も読み返しています。 以前にも、「物理数学の直観的方法」や「経済数学の直観的方法」を紹介しました。易しく解説してくれているのですが、何度も読まないと理解しがたいテーマが多いですね。 今回は、「経済数学の直感的方法 マクロ経済学編」(著者:長沼伸一郎 発行所:講談社)の一部を紹介します。 本編は、読みましたがほとんど理解不能ですので、また時間が経ってから何度も読むことになりそうです。非常に複雑な式が多く、この3冊の中では一番難しいかもしれません。 経済学専攻の方は、こんなに難しい式を用いて議論しているのでしょうか? それとも丸暗記かな? 世の中の事象は、複雑過ぎて計算通りにはならないのかもしれませんが。 今回は、本筋とは違いますが、量子化学や有限要素法に関係する事項が平易に書かれていましたので、まとめてみました。
説明資料はこちら → 固有値
p.1 先日のフーリエ変換や「仕事に役立つ数学」に出てきた「回転子」(cosθ -sinθ sinθ cosθ)という行列は、ベクトルに掛けるとそのベクトルを回転してくれます。左上のグラフの(3, 1)の座標に●があったとします。トレーシングペーパーを反時計方向に30°傾けた位置で、●を写します。30°戻したものが右上の図になります。60°が右下、90°回転させたものが左下となります。
p.2 上述の回転子のθに角度を入れて計算すれば、ベクトル(3、1)が回転した際のベクトルの座標が計算できます。
p.3 行列の対角線上にだけ数値があり、それ以外が0の場合、計算は非常に簡単になります。この「対角行列Λ」をPという行列とその逆行列P-1を挟んだ行列をAとします。Anという行列をPΛP-1で書くと、PΛP-1PΛP-1PΛP-1・・・のようになります。P-1Pは1になりますので、An=PΛnP-1と簡単に表せます。この対角線上の数値λを「固有値」と呼びます。
p.4 P及びP-1に実際に値と入れて、行列Aの固有値が入った対角行列Λを用いて計算した結果です。
p.5 固有ベクトルに行列をかけたものは、固有ベクトルに固有値をかけたものと等しい関係式があります。-30°回転する行列をかけた際の2つの固有値の絶対値は1となり半径1の単位円上にあります。
p.6 以前、行列をベクトルにかけた際のイメージについて説明しました。その部分の資料を再掲しました。 この資料に黄色の塗りつぶしの説明書きを加えました。固有ベクトル(10、10)に(2 0 0 2)という行列をかけて得られる行列は、(10、10)の2倍となります。この2が固有値なのです。
今日はここまで。 この固有値で経済の予測が可能になることについては明日説明します。