「東京藝大美術学部 究極の思考」(著者:増村岳史 発行所:クロスメディア・パブリッシング)を紹介します。藝大の入試は、他の美大と異なり、毎年予測できない課題が出題されるようです。 上野動物園に集合して、「上の動物園にいる動物を一匹以上描け」という課題もあったそうです。暴風雨になり、カンバスを載せる台が倒れたり、油絵具が雨水で分離する事態が発生し、受験生も大変だったそうです。ベンチに寝そべったヒトを書いた受験生もいたそうです。人間も確かに動物です。合格したかどうかまでは触れられていませんでした。 これ以外には「絵を描きなさい」「世界に目を向ける・世界を見通す・世界を映す をテーマに描きない」という課題がありますが、抽象的過ぎて何を描いたらよいかフリーズしてしまいそうです。 いかに創造力を働かせて訴えかけることができるかが合否の分かれ道になります。 このような修羅場を通過してきたので、バラエティーに富んだ方々が藝大の美術学部を卒業してきたようです。絵や彫刻で生計を立てている方ももちろん居られますが、最近はビジネス・デザイン、IT企業、コンサルティング、あるいはシンクタンクなどで幅広く活躍している卒業生が増えているそうです。 著者は、アートを学んだ人は、①言語・非言語、抽象・具象を網羅する理力(フォース)、②好奇心を持ち問う理力及び③熱狂的に没頭する理力を有しているとまとめています。 ①は、イメージしたものを形にできる力を常に鍛えているからだとしています。確かにそう思います。 小さい頃「なんだろう?」と疑問を持ったことがあると思いますが、この好奇心をいつまでも持ち続けるのがアーティストです。観察すればするほど、好奇心を引き出します。そして創造につながっていくようです。 そう言えば、ダヴィンチは人間の体を解剖して精密なスケッチをして、モナ・リザのようなアートを産み出したり、ヘリコプターを連想させるような飛行物体の絵を描いています。観察→好奇心→創造
STRAM教育という言葉ご存じですか? Science・Technology・Engineering・Art・Mathmaticsです。以前はSTEM教育でした。これにArtが加えられたのです。 日本は、高度成長期以降、国策として科学技術を奨励してきました。理数系に偏重した教育体系になっていました。未だに、高校の美術や音楽の単位数が減らされていると思います。美術や音楽も並行して学ばないと創造性が産まれないのではと危惧しています。 最近、Artを加えたSTRAM教育が提唱されてきたのは、バランスがとれた人材育成をする方向に舵を変えたと言えるのでしょうか? そうあって欲しいと思います。
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