「眠くならない数学の本」で紹介した「仕事に役立つ数学」の著者である西成教授の本「とんでもなく役にたつ数学」(著者:西成活裕 発行所:朝日出版社)が本箱にあって丁度目に入ったので久しぶりに開けてパラパラとめくっていたところ、気になった図があったので、次の資料の1ページ目に少しアレンジして書き写しておきます。将来を決めるのは、現在と過去が影響する2階微分という数式で表される。つまり、世の中のほとんどの現象は2階微分で表されるということです。F=mαという運動方程式の加速度αも位置xを時間で2階微分したものですし、拡散方程式にも2階微分が登場してきます。
資料はこちら → 2階微分
1階微分は、未来と現在の差、2階微分は未来と現在と過去の差を意味していると言っています。この表現は、式の意味を端的に表しているのです。p.2以降は、過去ブログ「森羅万象 平均的なものからのズレをなくす方向に動く」と「情報の積み重ねで未来を予測する」の資料から抜粋です。
p.2 極限の式で表すと、未来と現在の差が「前進差分」現在と過去の差が「後進差分」です。2階微分は、この「前進差分」と「後進差分」の平均値と現在との差なのです。現在からこの平均値になろうとして、未来に向かって物や熱が動きます。物の拡散やばね振動などもこの現象です。
p.3 テイラー展開を用いて2階微分を差分方程式で表すことができます。
p.4 この差分方程式を用いると、微分方程式を数学的に解くのが難しい場合、数値解析で算出することが可能になります。 2次元の場合は正方形の中心が現在、x軸とy軸に±Δ離れた部分が過去と未来になるわけです。3次元の場合は、立方体の中心が現在です。
p.5 2階微分の演算子を「ラプラシアン」と呼びます。「ラプラシアンをかけると0(ゼロ)になる式は、自分の周りの平均と自分の値が同じにする意味」があります。
p.6 差分方程式を用いて数値解析する場合、「陽解法」と「陰解法」があります。表に特徴をまとめておきます。表の下の図を見てください。未来を予測した場合、その予測データを使って再計算するのが陰解法です。安定した解が得られますが計算するためのメモリ容量が多くなる欠点があります。
p.7 2次元の非定常の熱流体用の差分方程式の例です。陰解法と陽解法の差分方程式の形が異なります。
最後の方は難しい話になってしまいましたが、2階微分(ラプラシアン)は、西成教授が言われるように過去・現在・未来という観点でみると面白くなってきます。ほとんどの世の中の現象が、2階微分で予測できるのです。