微生物の中には「芽胞菌」と呼ばれている細菌がいます。 生きるための栄養が不足してきたり、温度が上がってきたりなどの過酷状況になると「芽胞」という耐久性が高い殻の中に閉じこもってしまいます。 菌の心臓部は殻の中心に存在します。 100℃の煮沸でも死滅しません。 周囲の状況が繁殖に適する状態になるまで、殻の中に閉じこもっているのです。 生物が種を維持するための智慧はすごいものがあります。
次の資料をご覧ください。 → 菌の死滅温度・時間
以前説明しましたが、復習です。 横軸が加熱温度、縦軸が加熱時間です。 この図を見ると、100℃以上でハッチングがある領域が「芽胞菌」です。この菌を全て殺す(オーバーキル)には、グリーンの領域になるように温度及び加熱時間を増やす必要があります。 世の中で、オートクレーブ滅菌、高圧蒸気滅菌あるいは湿熱滅菌と言われているのは、このような高温の加熱温度・加熱時間を設定できる滅菌法なのです。 この図を見ると、カビは100℃以下でも死滅可能なことや、大腸菌、サルモネラ菌あるいはブドウ球菌のような病原菌は意外と温度が低くても死滅するようです。 ただO157のような大腸菌は加熱して菌が死んでも毒素が残っており食中毒を起こします。また、世界で最大級の毒素を有するボツリヌス菌は120℃以上にしないと死滅しないばかりか毒素も残しますので、手洗いは十分しましょう。 ボツリヌス菌の毒性 → 毒
「芽胞」を形成する菌に、「納豆菌( Bacillus subtilis var. natto)」があります。この菌は120℃ぐらいにしないと死滅しません。アルコール消毒でも死にませんので、滅菌する製品製造の場合は注意が必要です。 真空中でも生きているそうです。繁殖力が強いため醸造メーカーは、見学者に当日朝、納豆を食べないように注意喚起しているところもあるそうです。