久々に夏川草介さんの小説を読みました。「始まりの木」(著者:夏川草介 発行所:小学館)です。 著者は、医者で地域医療に従事しながら、小説家でもあります。有名な作品は、「神様のカルテ」「本を守ろうとする猫の話」があり、前者は映画化されました。本を読んで、感動して何度も涙腺が緩んだ記憶があります。私の好きな作家の一人です。今回は、民俗学の准教授と修士課程1年生の旅の話です。小説は読んでもらうとして、小説に登場する場所について資料にしてみました。
資料はこちら → 始まりの木
p.1 第1話「寄り道」に登場する場所です。太宰治が出入りしていた弘前市内の喫茶店が登場します。小説では店の名前は書かれていないので、Websiteで検索して「万茶ン」だろうと推測します。落ち着いた雰囲気のようなので、是非訪れてみたくなりました。 小説では、夜に嶽温泉に宿泊します。この旅館が准教授にとって意味がある場所なのです。ここでは、明かさないようしておきます。 この温泉は、岩木山の麓にあり、登山して泊まってみたい温泉です。
p.2 第2話は「七色」です。実相院で床もみじを観覧した後、叡山電鉄の岩倉駅で、出会った青年と一緒に鞍馬駅行きの電車に乗る話です。 実相院の床は黒光りしているために窓から入ってくる光景が鏡のように映されるそうです。新緑と紅葉、両方見てみたいものです。叡山電鉄の紅葉トンネルも綺麗でしょうね。今年の紅葉までに、コロナは治まっているでしょうか? このストーリーも夏川さんらしい展開をみせてくれます。
p.3 第3話は、この本のタイトル「始まりの木」と同じです。著者が伝えたいことが、ここにあるのでしょうね。下伊那の「大柊」と書かれていますが、飯田市近辺には該当する柊(ヒイラギ)の木が2つほどありました。羽場と下市田のヒイラギです。いずれも樹齢数百年経っています。羽場のヒイラギは左上の写真のように今より大きく繁っていましたが、中央道のために移設した際に威勢が衰えてしまったようです。 この本の伝えたいことを考えると、やるせない気持ちになります。
p.4 第4話は「同行二人」です。この同行二人の一人は自分、一人は連れの人ではありません。誰でしょうか? 延光寺での若者の振る舞いは、我々も含めて現代人の考え方を象徴しているように思えます。懐古主義と言われるかもしれませんが、自分ファースト、人間ファースト一辺倒ではいけない気がしています。 高知にはまだ、「泊り屋」のような文化財が保存されているようです。 ここも訪れてみたい所です。
p.5 小説の最終章、第5話「灯火」です。准教授と院生が日常生活している空間での話です。小説には、特定名称は出てきませんが、私が想像してまとめてみました。東大を舞台にして描かれていると仮定しました。二人が所属している民俗学教室は、教育学部辺りにあるとしました。准教授が学生の頃から親しくしていた住職が出てきて、大きな桜の木がでてきます。お寺ではないのですが、境内に一本桜があるので、根津神社を小説のモデルとしました。 この住職ががんで入院するのが東大病院。准教授と院生が農学部奥にある木造2階にあるバーに行く件があります。「ファカルティハウス」の2階ではないかと想像しました。 こんな想像をしながら小説を読んでみると楽しいですよ。
日本人は、至る所に神様を感じて生活してきました。文化的になればなるほど、その意識が薄れていくことは残念なことであると思います。小説の中で「神様は灯台である」と表現しています。 灯台を消さないようにしたいものです。