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サンプリングした音をどう解析するか?

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昨日、TV番組で「加齢性難聴」の話題がありました。歳をとるにつれて、子音が聞き取り難くなるそうです。この話を聞いて、やりかけのブログがあったことを思い出しました。 以前お勧めの本で紹介した「フーリエの冒険」を途中まで説明しましたが、最後まで終わっていませんでした。 第1話は、波を合成する「フーリエ級数」を第2話は、合成波を成分の波に分解する「フーリエ展開」でした。 今回は、理論的な「フーリエ展開」を実用化する場合の「離散フーリエ展開」に関する説明です。 人や楽器の音をマイクで拾って、周波数特性を解析したい場合、音を連続的にサンプリングすることはメモリーを喰い、計算も大変になります。したがって、ある一定周期の間にサンプリングのタイミングを設定してデータをサンプリングすることになります。 こんな飛び飛びのサンプリングデータで周波数特性を解析できるか疑問になると思いませんか? 適切なサンプリングタイミングを設定すれば、解析可能なのです。資料を使って説明したいと思います。

説明資料はこちら → 離散フーリエ展開

p.1 前回説明した「フーリエ展開」のおさらいです。 左上の合成波f(t)は、右上の黄色の部分の方法を用いて、各周波数成分振幅AnあるいはBnを算出していきます。「フーリエ級数」とは、いろいろな振幅、周波数の波を足し合わせて合成波f(t)にすることです。

p.2 合成波をよく見ると、周期T毎に同じ形の波が繰り返されています。ただしこの時点では、この波の関数f(t)は数式で表すことはできません。周波数特性が分かってしまえば、「フーリエ級数」でf(t)を数式として表すことはできるのです。では、どうするか? です。 関数f(t)の積分(つまり緑色の面積がわかれば、なんとか計算できそうです。

p.3 面積は、短冊状にしてその短冊の面積を合計すればよいですね。求めたいのは、緑色の面積です。左上は10分割の短冊にして、各々の面積の合計をしています。短冊の左上の角と青い曲線f(t)の接するところの振幅の数値を読みます。短冊の面積と同じ位置の緑色の面積は大きかろうが、小さかろうが気にしません。短冊の横幅は、1秒を10分割しているので0.1です。一番左の短冊の面積は。143×0.1=14.3となります。同様にして、合計の面積を出すと69.2となります。左下は20分割にしますので、短冊の横幅0.05となります。短冊の縦の振幅を読み取って、合計の面積を求めると70となります。 この短冊の横幅を無限に小さくしたものが積分ですね。短冊の横幅を小さくするほど面積の精度は増しますが、データ数は飛躍的に増大して処理時間が増大します。

p.4 表は、合成波を作成したExcelのデータです。合成波のA0は70にしていましたので、上記の1秒を20分割した0.05秒でサンプリングすれば、周波数解析できそうなことがわかります。

p.5 A1を求めます。これは、f(t)にcosωtを掛けたものの面積を短冊にして求めます。cosωtは振幅1で、周期T=1のところで1周期になるものです。今回、短冊の面積は10となり、右下の式から2倍してA1=20となります。

p.6 上述のA1=20の値も、合成波の成分であるcos波の振幅20と一致しています。

p.7 以上のようにもとめた振幅AnBを、横軸の周波数0、1、2、3、4Hzに対して棒グラフで示すと、周波数特性図を描くことができます。

p.8 2個のデータがあれば1回の上下の波は解析可能です。このようにf(t)全てのデータではなく、飛び飛びのデータで成分の解析をすることを「離散フーリエ展開」と呼びます。

p.9 周期的な波があった場合、どこで切り出せばよいか疑問を感じませんか? 結論から言うと、周期Tが一定であれば、どこでも構いません。 ただし、振幅AnBnの値はサンプリング位置によって異なります。真中左と右ではA1B1の値が異なります。これ以外のAnBnも異なります。ただし、これらの値を使えば、元の波の形に戻ります。 p.7では、各周波数でAnBnを並べて示していました。 これでは、サンプリングした位置によって別の図になってしまいます。そこで、P=√(An2+Bn2)という数値で振幅を示すことにします。そうすると、左右いずれの場合も28となります。この数値を使えば、どこで切り出してきても合成波f(t)の周波数特性を1つの図で表すことができるわけです。

いかがでしょうか? マイクで音をサンプリングして、音の強さ(振幅)の時間変化をデータにすれば周波数解析できます。「FFTアナライザ」で検索すると、フリーソフトもあるようです。FFTとはFast Fourier ransformの略で、高速フーリエ変換を意味します。上述の計算を高速に実行して周波数特性を瞬時に描く装置です。

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