物と物を接着する技術は種々あります。本日は、品質工学を超音波融着に適用する事例について説明します。超音波融着に共通した考え方やポイントを説明します。
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p.1 中に充填物があるハウジングを超音波融着で接合する事例です。以前に「機能窓」に関する説明をしました。「窓は広い方がよい」「窓の枠が大事」です。今回は、もう少し具体的な話をします。 横軸に超音波エネルギー、縦軸は何らかの特性値です。エネルギーが高すぎるとクラックやバリが発生し、エネルギーが小さいとリークしたり接合しない不具合が生じます。オレンジ色の部分がそのイメージです。不具合が生じない部分が「機能窓」になります。この機能窓の上下限の境界値を効率よく調べる必要があります。下限境界値はエアー圧を加えて、例えば水中でリークを調べるとよいでしょう。上限境界値は、バリの長さを測ったり溶剤でクラック(ひび割れ)を発生させる方法があります(ソルベントクラック法)。 右下の直交表をご覧ください。L1~L18行について、上下限の境界値を効率よく見つけたいですね。このような時は、中点を見ていくと良いと思います。L2行の場合①→②→③→④の順番に超音波エネルギーを変えて、〇×評価していきます。③と④の間の値を上限の境界値とします。
p.2 SN比は悪いものを大きな数字になるように良し悪しを点数化して良いし、○×でエネルギーの境界値を求めても良いです。
p.3 ソルベントクラック法でクラックを故意に発生させて評価する方法です。誤差因子N2ではN1よりも外圧を与えて評価します。ソルベントは、MIBK(メチルイソブチルケトン)とブタノールの混合比を変えてN1とN2でクラックが起きる個数をカウントしていきます。この場合のSN比は「ゼロ望目特性」のSN比でVTを算出してSN比を求めます。 VTは小さい程良いわけです。L1についてクラックの数を用いてVTを計算すると283ですので、SN比は-24.5dbとなります。他の行も同様に算出します。クラックが生じない場合は、1日浸漬するなど工夫してください。
p.4 エアーを加圧して、ハウジングが破壊されたり、浸漬した水中で泡が発生する超音波の融着エネルギーが20J、ハウジング内充填物が破損、接続部にバリあるいはクラックが生じる境界値が70Jであったとします。この値をη=10log(y12/y22)に入れて計算します。y1は大きく、y2が小さい程機能窓は拡がりSN比は大きくなる訳です。 この対数の中身は、超音波融着による溶け代や融着時間でも同様な計算が可能です。
今まで、いろいろなタイプの超音波融着を品質工学で検討した事例をみてきましたが、ほぼ同様な方法で検討可能です。