本日は、「無次元化」の話をします。以前のブログ「単位のはなし」の中で、物理量=数値×単位なので、物理量同士で計算する時は、単位も一緒に計算すると良いと説明しました。単位を見れば、掛ければよいのか割ればよいのかが直ぐわかります。
資料ご覧ください。 → 無次元化
p.1 距離、速度及び時間の関係式を忘れないようにするには「き・は・じ」で覚えるか、単位で推測する方法を述べました。お子さんが居られる方は、こんな教え方もあります。
p.2 今日の本題は、ここからです。単位が無い方が都合が良い場合があります。比較する場合や標準化する場合です。 比較する例として代表的なものは、百分率[%]がありますね。この特殊なものとしては、環境汚染濃度や不純物濃度で使う百万分率[ppm]、さらに薄い濃度の10億分率[ppb]があります。比重は水の密度に対する物質の密度の比です。 一方、物理の公式では係数があります。摩擦の式の場合、垂直抗力の大きさに比例した摩擦力となります。この摩擦係数は単位がない無次元です。 化学工学や流体工学を学んだ方がお馴染みの「レイノルズ数Re」は一番下のような、物理量や係数が組み合わされた係数ですが、これも単位がありません。無次元の効用は、次ページ以降に説明します。
p.3 流体は、パイプ、川、海あるいは空気中を流れます。その際に、その流れる方向に垂直な断面は、円、四角などのように寸法が計測できるものや、不定形な形状まで様々あり得ます。 レイノルズ数の式の中に代表長Lがありますが、不定形な形状の場合に近似した寸法を用います。例えば、パイプ内を液体が流れる場合、断面積が円ではなく、図のような形状だとします。水がパイプと接している部分を「潤辺」(赤線)Pとし、直径DHの円と近似させて解くと、DH=4A/Pとなります。これを代表長Lに代入します。
p.4 なぜ無次元が便利かというと、例えば飛行機や船を設計する際に模型で実験して確かめたい場合があります。その際にサイズを気にせずにサイズ比だけで評価するのに都合が良いわけです。レイノルズ数が大きくなると「乱流」になることがわかっています(左上図)。右下のように丸い物体を流れの中に入れるとレイノルズ数が小さい場合は層流と言って、物体の後ろでも流れは乱れませんが、レイノルズ数が大きい場合は下の写真のように渦を巻きます。飛行機であれば安定して飛ぶことが困難になります。設計する際に、レイノルズ数が大事になる訳です。スケールダウンして実験する場合に有用です。
p.5 先週、偏微分方程式を説明しました。一番上のような式でした。この方程式も、濃度Cを単位がない無次元濃度θ、長さLを単位がない無次元長さξに変換すると、サイズを気にせず(つまり境界条件に実際の長さを入れなくともよい)に偏微分方程式を解くことができます。一番下のように、拡散係数Dもなくなり簡単な式に変形できました。
今日は、単位がない無次元が便利な一面を説明しました。