製品を製造する工程検査あるいは出荷検査の規格を設定した経験がありますか? どうやって設定しますか? いろいろな考え方がありますが、「損失」を用いる方法が品質工学にあります。 品質工学という名称は、田口先生が「品質=損失」と定義したことに由来するようです。 「ベーシック品質工学へのとびら」(著者:田口玄一、横山巽子 発行所:日本規格協会)という本はごぞんじでしょうか? 日本規格協会が通信教育にこの本を用いています。 私も、10年以上も前に受講しましたが、当時はまだ本が出版される前でした。品質工学を知るためには、例題も掲載されていて良い本であると思います。ただし、初心者には少し骨が折れるかもしれません。 この本の導入部に「損失関数」の話が登場します。 この損失について、上述の本を参考に昔まとめた資料を紹介します。
資料はこちら → 品質工学(損失)
P.2 以前ブログ「悩ましい抜取検査数の設定」の説明の中で、AQLは購入者の購入コストと生産者の不良損失がミニマムになる不良率で決まるという話をしました。
p.3 田口先生の言われる「損失関数」はこの損失を「2次関数」で近似してL(y)=k(y-m)2としています。横軸yが機能特性、mが目標値、縦軸が損失Lです。目標値mから離れるにしたがって損失コストが増加します。「機能限界Δ0」は、機能の目標値mからΔ0以上離れると機能しなくなる限界値です。機能限界m±Δ0での損失コストをA0として、2次関数に代入すると3)式が得られます。この式を用いると、製造時の規格値m±Δを算出できます。
p.4 例です。ある製品の目標電圧が100Vに対して±5V離れると6円/個の損失があるとします。製造での不良は0.5円/個に抑えたいとすると、式に代入して、製造での管理規格は、100±1.45Vがよさそうです。
p.5 p.4の数値を絵に描くとこのようになります。
p.6 検査に使う規格は、望目、望小及び望大特性の3種類あります。 その際の損失関数を示しました。
p.7 製品の検査値のデータが複数ある場合、目標値との差の平方和VTが分散ですね。VTは標準偏差の2乗です。これを損失関数に代入したものが一番上の式です。この式を用いれば、製品の工程検査や出荷試験の許容幅を決めることができます。
p.8 A1とA2の方法で製造した場合の検査値の目標からのズレを示します。これらによってσ2が計算できますね。静電気対策しないと0.9円/個の損失があるとします。A1の場合は静電気対策をしてもトータルコストは0.5円/個以下で十分安定しています。A2の場合、製造コスト0.1円/個かけたとしても、トータルコストはまだ許容範囲内にあります。
いかがでしたか? 製造条件設定に品質コストを反映させる手法は大事です。 覚えておきましょう。