成形条件を品質工学で設定する方法について順番を追って説明しています。 今日は、直交表を用いて実験する前までの話になります。 この辺りで研修生は、早く実験したくてウズウズしている様子になります。 品質工学は直交表実験よりも、むしろここまでの考え方や方針の方が重要なのです。 他の業務も同様です。 あるべき姿、理想がイメージできていないと何事も上手くいかないのです。 では、次の資料ご覧ください。
資料はこちら → システム分類、制御・誤差因子
p.1 成形条件を設定するというと、技術者は成形プロセスのパラメータだけをリストアップして実験したがります。 成形に使う原材料の特性は一定でしょうか? 成形の後に、部品と接合する工程や熱処理工程がある場合、そのプロセスの影響は受けないでしょうか? ユーザーに輸送・保管する環境やユーザーの使用環境は問題ないでしょうか?品質工学では、我々がコントロールできるもの(制御因子)とコントロールできないもの(誤差因子)に振り分け、制御因子は成形工程以外のパラメータについても適用します。適用する範囲を可能な限り広く設定します。 このことを品質工学では「システム分割」と呼びます。
p.2 「プロセス機能展開表」をExcel等で作成しておくと整理できます。 これは一つの例ですが、一番左が原料入手して成形、接合及び熱処理して製品にして輸送後して顧客にわたるフローがあります。右の列はシステム分割して適用するかしないかを明記します。 その右列は項目です。 基本機能、評価時の入力・出力を何にするか。制御因子、誤差因子を何にするか。 最適条件、最悪条件のSN比とその推定利得、確認実験後の利得をその右隣りの列に記入していきます。 「L18-1」は一回目の直交表実験結果を記入します。 この表は、プロセス毎に分けて書いてしまっているので、あまり良い例ではありません。 実際は、成形・溶着及び熱処理のプロセス各々からパラメータを少しずつピックアップすることが好ましいと言われています。
p.3 我々がコントロールできる「制御因子」を選択します。 今回は成形条件しかピックアップしていませんが、実際に実施する際は、上述したように前後工程の制御因子も加えてください。 今回はL18(18通りの組み合わせ実験を実施)の直交表実験ですので、Aの因子は2水準、B~Hの因子は3水準設定できます。 水準は可能な限り広く設定してください。成形機が壊れない程度に。 以前、成形技術者に水準を設定してもらったことがあるのですが、経験的に成形できる範囲を知っているために、範囲を安全をみて狭く設定しました。 これですと、パラメータの違いが評価できませんので、避けてください。
p.4 誤差因子の設定は制御因子の設定よりも重要です。 ここでも、18行の半分以上が成形不良になるぐらいの誤差因子(いじわる条件)を考えてください。 真夏に輸送中、60℃をこえる車中におかれるとか、飛行機で輸送中に陰圧になるとか、原料メーカーで重合度の違うものが混ざってしまった等などです。 理想よりも出力を上げる因子、出力上げる因子をまとめてサンプルに与えても良いです。いくつもの誤差をまとめることを「誤差の調合」と呼びます。 今回は樹脂の流れ性(MFR)が極端に違う原料を誤差因子に設定します。
今日はここまでです。