「Cpk」という言葉はご存知でしょうか? 「工程能力指数」と言って、製造ラインの品質の安定性を数値で表した指標です。「Ppk」という言葉はいかがでしょうか? 私も数か月前に初めて知りました。「Cpk」と「Ppk」はJISにも定義されていますが説明を読んでも腑に落ちていませんでした。 Minitabという統計ソフトの中にも「Ppk」が登場してきます。このMinitabの解説を読み、ほぼ理解できましたので、説明します。
説明資料を参照ください。 → CPKとPPKの違い
p.2 CpkもPpkも計算式は似ています。 式中、USLはUpper Specification Limit(上限規格)今回は145、LSLはLowerr Specification Limit(下限値)今回は65です。「xダブルバー」は、全ての平均値です。「ー(バー)」は平均値を表します。p.4の表をご覧ください。 1日~30日まで、4個のサンプルのデータが表になっています。x1~x4の平均値が、「xバー」の列で、平均値の平均値つまり全体の平均値が「xダブルバー」になります。CpuとPpuの分子は(上限規格値ー全体の平均値)、CplとPplの分子は(全体の平均値ー下限規格値)となります。 CpkもPpkも分母は標準偏差の3倍ですが、記号を変えてあります。この標準偏差の値がCpkとPpkの違いを示しています。表の下に標準偏差の式を記載しました。Cpkの標準偏差σは「Rバー」をd2で割った値です。「Rバー」はp.4の表をご覧ください。x1~x4のデータのMaxとMinの差です。つまり範囲(Range)、ばらつきです。 d2は、管理図においてサンプル数によって定められた値です。数値はExcel表を添付するので、ご参照ください。 Ppkの標準偏差sは、(全てデータより全体の平均値を差し引いた平方和)の平均値を算出して平方根にしたものです。 通常母集団よりN個サンプリングした場合の標準偏差ですね。この標準偏差の違いについては、次ページ以降、具体例で説明します。 こうして得られたCpuとCplあるいはPpuとPplの数値の小さい方をCpkあるいはPpkとして採用します。 Cpkは、統計的管理状態の場合に用い、管理状態かどうか不明の場合はPpkを用います。製造条件のバリデーション時はPpkを用い、決められた製造ロット数(例えば30ロット)のデータを解析して安定性が確認された後、Cpkを使うのが好ましいと思います。「安定性が確認される」とはどう判断するかの目安については、後述します。
p.3 p.4の表にある工程1と工程2について1日~30日のデータをプロットしたものです。工程1と2のデータは同じですが、データを並び替えてあります。左下は、ばらつきの範囲R(=MaxーMin)を示しています。工程1(青線)は日々のばらつきは大きいですが、変動は小さく、工程2(赤線)は、日々のばらつきは小さいですが、変動が大きいことが分かります。全てのデータは右下のヒストグラムのように分布しています。
p.4 工程1と2について、日々の平均値(xバー)と範囲R、全体平均(xダブルバー)と範囲の平均(Rバー)、全てのデータの標準偏差s、範囲の平均値とd2から算出した標準偏差σ、「xバー・R管理図」の上方管理限界:UCL(Upper Control Limit)と下方管理限界:LCL(Lower Control Limit)を算出します。A2、D3、D4及びd2の係数は添付のExcel表をご参照ください。1日のサンプル数4個の係数が記載されています。
p.5 前ページで算出したUCL及びLCLを工程1と工程2の管理図の中に水平線で描いてあります。上半分が日々の平均値のトレンド、下半分が範囲Rのトレンドです。左が工程1、右が工程2です。 このグラフより、工程1は範囲Rは大きいものの、平均値及びR共にUCLとLCLの範囲内に入っています。工程2は、範囲Rは工程1の半分ほどでUCL以下の範囲内入っていますが、平均値はUCL及びLCLの線を越えています。 UCLとLCLの間隔は、p.4の右下の計算式を見てわかるように「Rバー」が小さいほど狭くなり、管理状態は厳しくなります。 つまり、日々(群内)ばらつきは小さいが日付が異なる(群間)と変動が大きく管理された状態とは言えないと言えます。 例えば、毎日装置を調整してばらつきを小さくしているが、得られた製品性能がバラバラの状況を示しています。
中ほどにCpu,Cpl,PpuとPplそして小さい値を採用したCpkとPpkを表にしてあります。Ppkは全てのデータを用いて計算しますので、工程1及び2は同じ値になります。Pplの方がPpu小さい値なのでこれがPpkで値は1.14となります。CpuとCplはいずれの工程もCplの方が小さいので、これがCpkとなります。工程1が1.19、工程2が2.07です。工程2の方がCpkが大きいので安定しているように思えます。ですが、変動が大きいので管理状態とは言い難いですね。 それでは、管理状態はどう判断するか? Ppkと同じ程度の数値であれば管理状態にあるという基準にするとよいようです。Ppkが1.14、工程1のCpkは1.19で近い数値ですので、工程1の方が工程2より管理状態にあると判定します。
いかがでしたか? CpkとPpkの使い分け、理解できましたでしょうか?
上述の説明に使用したデータおよび管理図の係数表はこちら → CpkPpk