「ロボット学者、植物に学ぶ」(著者:バルバラ・マッツォライ 発行所:白揚社)を紹介します。生物を真似たロボットは世界中で研究され、報告されています。人間に近いヒューマノイドロボットより、機能が単純な部分が多いのが一つの理由だと思います。 生物の機能を学んで応用する学問に「バイオミメティクス」という言葉があります。以前、「物真似からアイデアは産まれる」「ヒントは自然界に」で取り上げました。今回、上述の本にも幾つか紹介されていますので、まとめてみました。
資料はこちら → バイオインスピレーション
p.1 「バイオミメティクス」という言葉の他に「バイオインスピレーション」という言葉があるそうです。バイオミメティクスの対象の生物の機能をそのまま模倣するのではなく、そこからヒントを得て新しいものを創造する意味があるそうです。カワセミの嘴を応用した新幹線やフクロウの羽は機能を模倣していました。 「ビーナスの花かご」とも呼ばれている「カイロウドウケツ」を漢字で書くと「偕老同穴」となります。「生きてはともに老い、死んでは同じ墓に葬られる」という意味で、仲睦まじい夫婦のことだそうです。ビーナスの花かごは欧米、偕老同穴は東洋的な文化を感じますね。 脱線しました。 このカイロウドウケツはガラス質で形成されていて、光ファイバーより強度があり、低温度で形成できるので、エネルギーコストがかかりません。形成に時間がかかるというデメリットはありますが、今後、「低エネルギー」とか「脱炭素」はキーワードですね。
p.2 タコからインスピレーションを得ることがあります。 タコの足には5億のニューロン(神経細胞)の大部分が配置されていて、各々の足が異なる動きができます。この足にある吸盤が詳細に研究されていて、吸盤の内側は平滑面ではないようです。ヤモリの指の拡大図同様、細かい凹凸形状をしているようです。 タコの伸縮する皮膚を模倣した人工皮膚も開発されています。色を変える擬態機能を持たせる研究も進められています。次の文献内にある動画をご覧ください。 → https://neurosciencenews.com/electroluminescent-skin-robots-392/
p.3 水中動物を模したロボットもいろいろ開発されています。魚、ウミガメ、サンショウウオ・ロボットがあります。 左から右へ進化の過程を研究する意図もあるようです。ヒレで泳いでいたものが、4本の足となり水中から陸上に上陸するメカニズムを模倣することで調べています。
サンショウウオの動画をご覧ください。22秒後あたりからです。→ https://www.youtube.com/watch?v=Tq8Yw19bn7Q&t=30s
サンショウウオ・ロボット開発者のTEDです→ https://www.youtube.com/watch?v=K926HAKRFvw
p.4 ヤモリロボットは以前紹介しました。今回新たに、ゴキブリ型ロボットを紹介します。ゴキブリは凹凸のあるところをものすごく速いスピードで動き回ります。転んでも、直ぐ起き上がります。
動画をご覧ください。9分54秒あたりからです。→ https://www.youtube.com/watch?v=BUmOKfllAEo&t=618s
この動きは、災害時の救助、原子炉の廃炉内あるいは火星探査など人間が近づけない場所で利用することができてきます。
今回は、動物を模倣するバイオミメティクスあるいはバイオインスピレーションを紹介しました。 明日は、この本の主題である植物ロボットについて紹介します。