品質工学の演習において、データがとれなかった際、「0(ゼロ)」を入れるとSN比の計算ができないので、欠測処理を簡易的に行うため、「0.01」を入れて計算して、と指示しておいたところ、半分以上の行が計測できない事態が生じました。要因効果図が異常なグラフになり推定利得が異常に大きくなってしまったのです。こんなときの対処法を資料にまとめました。
資料はこちら → 欠測処理その3
p.1 研修生には、「直交表実験の半分が測定結果×でもOK。むしろ、その方が好ましい」という話をしています。今回の事例は、まさにこの状態になりました。
p.2 測定ができなかったら、「0.01」を入れて計算してという指示のもと計算して要因効果図を描いたものが上半分です。左上がデータです。誤差因子N1とN2について信号因子M1、M2及びM3のデータがあります。今回計測できなかった箇所が黄色の網掛けで、「0.01」を入れてあります。SN比と感度を計算すると青の網掛けのように大きな負の値になっています。この値を用いて要因効果図を描いたのが右隣りです。D因子が異常に幅広い数値のため、他の因子の変化が読み難くなり、推定利得も異常に大きな値になっています。 これを改善したのが、下半分です。左上の表のSN比と感度の青の塗りつぶし以外の値の最小値を算出します。SN比が54.0、感度が67.7となります。これらの値から3db差し引いた値を、青の塗りつぶし部分に代入します。今回は、正確に3dbを弾いた値ではなく、切りのよいSN比が50.0、感度が65.0としました。この結果、要因効果図において、D因子以外の効果の差もわかるようになり、推定利得も相応な値となりました。
p.3 なぜ3dbを差し引くかというと、SN比で3dbの差は対数の中にある真数(実際のデータ)では2倍効果があるという意味なので、データがとれなかった行は、大きく見積もってもデータがとれた行の最小値の半分程度の効果であるとしておくわけです。
この他の欠測処理の仕方は、「実験失敗して諦めない」「データが欠測している場合は?」「より近いものは?」もご覧ください。