工程検査で抜取り試験を実施する際に、AQLの設定やサンプリング数設定には悩みますね。正解はありませんが、設定の参考にしていただければと思います。添付の抜取検査のパワーポイントを参照ください。合わせて、Excelファイルも参考になると思います。今わからなくと、何度も見返しているうちにだんだんわかってきます。
説明資料はこちら → 抜取検査
Excelファイルはこちら → OC曲線
p.2 赤い玉と白い玉が入っている袋から2個取り出す場合が左、3個取り出す場合が右です。取り出した場合のパターンの数が、左は3パターン、右は4パターンになります。赤を取り出す確率がp、白を取り出す確率qは1-pで表されます。これを式にしたのが、右下の式になります。 赤白合わせてn個の中から赤をr個取り出す確率の式です。
p.3 n個からr個取り出すパターンの数nCrはExcelでは、COBIN(n,r)で計算できます。
p.4 コインを8回投げた時、裏表の出る確率が1/2の時は、左図のように左右対称の分布図で4回目の頻度が高くなります。不良率20%の時は2個のところの頻度が高くなります。
p.5 不良率0.5、1、2及び5%の場合、50個検査して不良品1個以下なら合格とした場合、実際の合格品と不合格の比率は、左図のヒストグラムの縦の赤線の各々右左の合計数の割合となります。 不良率0.5%でも不合格品が2.6%(→生産者危険と言います) 不良率2%の場合、不合格品は26.4%も出てしまいます 不良率5%の場合、合格品が27.9%も出てしまいます(赤丸)(→消費者危険と言います)
p.6 上述のヒストグラムをExcelで作成する関数です。BINOMDIST(1箱中の不良数r,サンプリング数n,不良率p,関数形式)の関数を用います。関数形式にFALSEを入れると、不良数r毎の確率が計算され、TRUEを入れるとその不良数まで足した累積の確率を計算します。
p.7 AQLの表はOC曲線を基に作成されています。p.5のヒストグラムとOC曲線を対比させました。この対比を見るとOC曲線や抜取表の意味がイメージできると思います。
p.8 Excel関数を用いたOC曲線の算出法
p.9 AQLは合格品質限界、LTPDはロット許可不良率 前者が生産者危険(5%程度)、後者が消費者危険(10%目途)に対応します。AQLは生産者の都合しか考えていません。本来は、消費者危険も併せて考慮する必要があります。 品質部門の方でも、理解していない方がいます。
p.10 右図を見てください。不良率2%の場合、検査数が50、100、200個と増やした場合のOC曲線を示します。 検査数が大きいほど、消費者の危険は減少していきます。全数検査が2%のところで垂直に立つ破線になります。2%より左側が合格、右側が不合格に明確に区分けできます。
p.12 AQLの抜取表からサンプルサイズを設定する際には、品質が同一である単位としてロットサイズを決めます。 非破壊の検査は通常検査水準Ⅱのアルファベットを選ぶとサンプル数が自動的に決まります。
p.13 上記ロットサイズが小さい時は、超幾何分布に従います。
p.、14 サンプリング数を20個、合格判定数を1個に固定して、母集団の数を40、80、200及び規定なしとした場合、母集団の数量が多く(サンプリング数の10倍以上)になると超幾何分布から2項分布に収束し、合格確率は母集団の数に依存しなくなってきます
p.15 抜取表で設定したサンプル数の行を右に水平に進んでいき(合格判定数Ac 不合格判定数Re)が(0 1)のところを選定することをよくやります。その列の上にある数字がAQLとなります。 決められたAQLの列より(0 1)を探して、サンプルサイズを決めるやり方もしばしばやります。 右下のグラフが表中の赤枠のAQLのOC曲線を描いています。左側が厳しく、右側に行くほど甘くなります。 AQLは、その品質レベルのリスクを考慮して決めていきます。
p.16 母集団が150個の場合はサンプリング数は、通常なみ検査では20個、合格判定数を0個とすると、AQL0.65になります。母集団10,000個の場合はサンプリング数は200個で合格判定数を0個とするとAQLは0.065となります。ロットサイズからサンプリング数を決めて合格判定数を0個とするとAQLの値は異なることになります。
p.19 AQLを0.1%(p1)、LTPDを7%(p2)と設定した時に、生産者危険を5%以内、消費者危険を10%以内にするためのサンプル数と合格判定数を割り出す表があります。この表より、サンプル数は40、合格判定数は0となります。
p.20 Excelでもサンプル数を設定できます。不良率が0.1%と7%のOC曲線を描いたものが右上図です。生産者危険5%(合格確率95%)、消費者危険10%(合格確率10%)が青の縦線です。この縦線間のサンプル数が適正な数量になります。 p.19の表ではサンプル数40となりましたが、Excelの計算上は、サンプリング数は35~50個でもOKとなります。
p.21 AQL0.65の場合、母集団が280個の場合サンプリング数は32個となります。500個の場合は、サンプリング数50個となり、抜取表のサンプル数が32の場所には⇑、サンプル数50では⇓の矢印が記載されています。上矢印の場合、サンプル数20で(合格判定数Ac 不合格判定数Re)(0 1)、下矢印の場合、サンプリング数80で(合格判定数Ac 不合格判定数Re)(1 2)となります。左下の図は、(0 1)と(1 2)と記載があるセルのOC曲線で、右図は上矢印と下矢印を採用した場合のOC曲線です。矢印のあるセルの場合は矢印の先の状態で判定します。母数が大きい場合は、上と下矢印先のOC曲線は近づいてきます(右下図)が、母数が少ない場合はサンプリング数が多い方が厳しくなります(右上図)。
p.22 生産に移行する前のバリデーションの段階では不良率が不明な場合が多いので、「きつい」抜取検査で設定して、安定してきたら「なみ」あるいは「ゆるい」抜取にしていけばよいのではないでしょうか?
p.23 AQLの設定は不良損失とコストがミニマムになるように決めるべきだと思います。
以上、抜取検査表を利用したサンプリング数設定は悩ましいですね。 最終的にはリスクが高い製品については、生産者危険5%以内、消費者危険10%以内を満たすOC曲線となるサンプリング数を設定し、場合によっては全数検査を設定し、リスクが低いものはAQL値を緩和してもよいのではないかと考えます。 どう品質を保証するかで関連部署で協議して決めてください。
サンプリング数設定は、私にとっても永遠の課題です。正解はないのです。 抜取表でのサンプルサイズ数を決める方法が書かれた書物はたくさんあるのですが、その意味合いを解説した文献が見当たらないので、OC曲線を描いたりして自分なりに思考錯誤してみました。 また新たに分かったことができましたら、バージョンアップします。