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リスクは直観で決まる?

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リスク心理学」(著者:中谷内一也 発行所:筑摩書房)を紹介します。新人研修でもリスク分析について説明するのですが、リスク評価は個人の考え方でかなりばらつきます。 この本は、原因を心理学的な側面から解説しています。例題で理解を深めてくれます。

  1. 2020年3月に新型コロナに感染して亡くなった、国民的人気のあったコメディアンは誰?
  2. 国内で最初の感染者が確認されてから1年間の死者は何人?

AとB答えられましたか? Aは志村けん、Bは約7,000人です。 個別事例の方が統計的データよりインパクトがある という事例です。 同様に、年間50人程度の虐待死がありますが、一人の女の子の報道の方がインパクトがあります。「二重過程理論」では、直情的で直ぐ判断行動するシステム1論理的・統計的・冷静な判断を行うシステム2があり、システム1が主導することが多いようです。

原発事故、新型コロナ及び自転車事故を比較した場合、リスクが高いのはどれでしょう?  この場合、「恐ろしさの因子」「未知性因子」がリスク評価に影響するようです。東日本大震災による原発事故が「恐ろしさの因子」が大きく、新型コロナは「未知性因子」が大きくなります。自転車事故は件数が多いにも関わらず、この2因子とも効果が低いので、リスクをあまり感じないのです。

研修では、リスクは危害の重篤性と発生頻度の掛け算で決まるという話をしていますが、上述のように多分に個人の直観・利益・アンカリングの影響でリスク評価する傾向が強いようです。個人個人でその基準・感度が異なるので評価にばらつきが生じてしまうようです。上述のシステム2(論理的、統計的)を用いたリスク評価でばらつきを小さくする必要がありそうです。 以下の問いに答えてみてください。

  1. 全世界でサメに襲われて死んだ人数は?
  2. 東日本大震災では10m以上の津波で多くの方が犠牲になりました。あなたは、どのくらいの高さの津波で避難しますか?
  3. ナチュラルチーズとプロセスチーズの何れが健康によいでしょうか?

どう回答されましたでしょうか? Aは犠牲者は一桁、10人以内、Bは50cmの津波ででも立っていられません。Cは「自然→善」「人為的→悪」という意識のためナチュラルチーズを選ぶ人が多いそうです。 ヒトが、直観・利益・アンカリングの影響を受けやすい事例でした。

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