医療経済の続きです。医療の公平さについて取り上げます。
資料をご覧ください。→ 医療経済その5
p.1 所得が高いAさんと低いBさんがいます。左の図をご覧ください。右下の健康生産曲線Aはx軸がAさんの健康水準、y軸が医療費です。医療費を増加(y軸の下方向)すると健康水準が増加します(x軸右方向)。健康生産水準Bは、x軸左方向が医療費増加、y軸上方向が健康水準増加方向です。左下は、AさんとBさんの医療費の分配を直線で示しています。AさんとBさんの医療費を平等に分配した点から、水平線及び垂直線を描き、AさんとBさんの健康生産曲線と交わった点から垂直線と水平線を描いてその交点を右上に描いたものが、健康生産フロンティア(赤の曲線)です。45°線が平等な健康水準ですが、この場合はAさんの健康水準がBさんより大きくなります。 生活環境により、健康生産曲線が等しくないことによります。 右図は、Aさんが多く医療費をかけた場合です。AさんとBさんの医療格差はさらに拡がります。
p.2 左図はp.1と一緒です。右図は健康水準を同じにした場合の医療費の分配状況です。Bさんに公的な補助をしてあげる必要があります。
p.3 混合診療の話です。保険診療のみの場合は、自己負担が3割です。整形や認可されていない新薬・新技術の治療の場合は保険外診療のため全額自己負担です。保険診療と保険外診療を同時にすることがあります。その場合、混合診療となり、自己負担は足し算になります。現在、いろいろな理由により混合診療が禁止されています。乳がん治療は保険診療ですが、乳房再建手術は保険適用外になり、全額負担となってしまいます。腑に落ちないルールですね。 現在見直しされているようですが。
p.4 混合診療を解禁した場合の影響を図で示します。横軸が医療サービス量、縦軸が医療費です。保険適用がない場合、医療費100%のA点にいます。公的保険の給付を受けた点がB点です。医療費が安くなったので、医療サービス向上を要求してC点となります。ここで民間保険給付を受けてD点になります。さらに支払いが減ったので、サービスを付加させてE点となります。医療費総額の10分の1以下の自己負担で、サービスが当初の2倍以上となるわけです。本来q12のサービスでよかったものがq29のサービスにしたことにより公的保険が余分に支払われることを示しています。混合診療を解禁しないのは、このようなモラルハザードを懸念していることが一つの理由と思われます。
保険適用一つとっても、いろいろな諸事情が絡み合っているので、対策は難しいですね。