「生き物が大人になるまで」(著者:稲垣栄洋 発行所:大和書房)を紹介します。私は、この著者の本が好きで今までにも何冊か読んでいます。以前のブログ「芽生える季節到来/ 足元に何が?」で紹介しました。今回も1日で読み終えてしまいました。「早く大人になるって、いいことなの?」「生物の脳はAIに負けてしまうのか?」「カバの口が大きい理由は」「くっつき虫の実の中身を見たことがありますか?」「おばあさんが人類を進化させた?」「この植物の成長を計りなさい」「成長するってどういうこと?」などのトピックスがあります。 この中から、改めて共感を覚えた部分や私にとっての新しい知見を幾つか紹介します。興味があれば、購入するなり、図書館で借りるなどして、お読みください。
哺乳類、とりわけ人間の子供は親によって守られて成長していく期間が最長です。なぜか? 生きていくための「知能」が膨大に必要であるからなのです。この本は、いろいろな話題を提供しながら、一貫してこのことを説明していきます。人間にも「本能」はあります。本能は遺伝子の中に予めプログラムが組まれておりますので、間違いなく行動できます。ところが、知能はは自分で解答を考えて行動していかなければならないのです。時には失敗することもあるのです。AIなら間違いを犯さないかというと、現時点では人間には劣ります。画像を認識する目に当たる部分はAIも進化していますが、五感情報を基に総合的に判断するにはまだまだ時間を要します。
くっつき虫と呼ばれている「オナモミ」の実の中を見たことありますか? 2つの形状のことなる種子が入っているそうです。すぐに芽を出すせっかちな長い種子と、のんびりと芽を出す短い種子だそうです。どちらが優れていると思いますか? 人間の親であれば、直ぐに立ち上がり、直ぐに言葉をしゃべる方が優れていると考えませんか? オナモミに質問すると「どちらが優れているかは決められない」と回答するようです。種子が落ちた場所や環境により、適切な種子が変わるからです。 わざと種子の発育にばらつきを持たせて、いろいろなリスクに備えているわけです。人間も種の繁栄を願うならば、多様性を理解する必要がありそうです。
「草高」は地面から茎の先端までの高さ、「草丈」は地面から茎先端までの長さを示します。 皆さんは、どちらを成長の指標にしますか? 我々は、草高を成長の指標にしがちだと思います。木の高さはまさにそうですね。高さのほうが比較しやすいからです。 地面に這った植物の長さはあまり意識しませんね。地べたに這った雑草の方がしたたかかもしれません。 人間の社会において、学業の成績が草高だとすると、草丈に相当するものを見落としているかもしれません。 改めて、考えさせられる例でした。
水をたくさん与えている野菜は日照りに弱く、水を与えていない雑草はなぜ日照りに強いか? 雑草は、水を得るために地下深く根をはっていくからなのです。このことも示唆に富んだ事例です。身長のように目に見える成長ではなく、「心根」の成長が重要であると著者は言っています。同感です。 この本はもっと面白く書かれていますので、是非お読みください。