量子力学その2です。 昨日ハイゼンベルクの「行列力学」の説明をしました。今日は、ハイゼンベルク方程式を変形してあの有名なシュレディンガー方程式を導きます。資料ご覧ください。式の変形なので、意外に簡単です。
資料はこちら → 量子とは?その2
p.1 昨日「行列力学」の性質を4つ記載しました。①と④は昨日説明しました。②のハミルトニアンは運動エネルギーと位置エネルギーの和で示されます。これは古典力学で出て来ました。③ハイゼンベルク方程式は、①と②を合わせた式です。左辺は、ちょっとだけ時間が経ったときの物理量A ̂(t)です。物理量とは位置エネルギーであったり運動量だったりします。右辺は、ハミルトニアンと運動量の交換子です。ちょっと時間が経った時に、運動量か位置エネルギーのどちらかわからないが、何らかのエネルギー変化があるという式です。行列力学では、行列の物理量で解いていく方法です。
p.2 ハイゼンベルク方程式でちょっと時間δtが経った時の式が2番目の式です。初期状態のA(0)に交換子が足されています。A(0)を真中にして式を整理すると括弧の中は符号が異なる複素数になり、共役系であることがわかります。昨日出てきた「†(ダガー)」を用い、時間発展行列のT(δt)及びT(δt)†で書き換えるとシンプルな式になります。時間がδtだけ進行してA(δt)に変化 しました。ハイゼンベルクの④の式に代入します。時間変化する行列を時間変化しない状態ベクトルで挟んだ形になります。この式が「ハイゼンベルク描像」と言われています。ハイゼンベルクの行列力学では、位置エネルギーあるいは運動量が時間で変動し、状態は変化しないという「抽象的な粒子」を想定しています。
p.3 ハイゼンベルク描像の区切り位置を2番目のように変えます。これが「シュレディンガー描像」と言われている式です。著者は面白い表現を使っています。ハイゼンベルク描像が「し・んぶん・し」ならシュレディンガー描像は「しん・ぶ・んし」だそうです。こうすることにより、行列力学で時間変化しなかった状態が変化し、時間変化していた物理量の行列が時間変化しなくなりました。状態ベクトルが時間変化するということは波を扱うことを意味します。
p.4 変形していき、微分の形にすると「シュレディンガー方程式」になるのです。 量子を粒子と見るか、波と見るかによって方程式が変化するだけで、どちらも量子の一面を表しているのです。
今日はここまでです。式の導出ばかりでしたが、「しんぶんし」の「・」の位置を変えるだけで見方が変わるというのは分かり易い表現でした。