理系出身なので、微分方程式は多少学びましたが、道具として使えるまでには至っていません。先日、図書館の新刊本コーナーに「道具としての微分方程式 偏微分偏」(著者:斎藤恭一 発行所:講談社)がありましたので、パラパラと見ると読み易そうでしたので借りて来て、先日の連休中に読んでみました。この本も何回かに分けて、忘れないように資料を作成してみようと思います。
資料ご覧ください → 偏微分方程式その1
p.1 今日はのキーワードは「流束=(ドヤドヤの流束)+(ジワジワの流束)」です。 世の中の現象は式で表すことができます。 お金をイメージすると分かり易いです。一番上の式をご覧ください。 給料でもお年玉でも、最初にお金をもらいますね。それが「入金」。そこから物を購入したりする「出費」を引きます。あるいはお金を落として「紛失」した金額を引いて残ったお金を「貯蓄」に回します。 通常は、このような順番の式としますが、科学計算の場合は、「インプット-蓄積-消失=アウトプット」のように書くのが一般的です。
次は「流束」の概念をイメージしてください。右上の絵をイメージしてください。円柱の底面からインプットして上面からアウトプットする流れが「流束」です。流束は、単位面積・単位時間に通過する物理量です。物理量は、質量、熱量あるいは運動量が主なものです。各々の流束の単位をご覧ください。分母が[m2s]になっていますね。運動量流束はイメージがつきませんが、矢印の右のように書き換えると、分子の力を分母の面積で割っているので、「圧力」であることがわかります。
電車のドアが開いて、乗客が一気に電車に乗り込む流束が「ドヤドヤ流束」、電車内で開いている空間に乗客が移動するのを「ジワジワ流束」と著者はネーミングしています。上手く名付けたと思います。トータル流束は両者の和になります。「ドヤドヤ流束」は、コーヒーの砂糖を入れた後スプーンでかき混ぜて対流を起こすことによって生じる流れであり、「ジワジワ流束」とは、砂糖を入れた後自然に砂糖が溶けていく流れです。濃いほうから薄い方に溶けていく拡散の流れです。
p.2 直角、円柱及び球座標における微小体積をイメージしておいてください。
p.3 質量、熱量及び運動量の物理量が「場」の中で移動したことで生じる結果が、各々濃度、温度及び速度に対応します。濃度と温度は方向を持たないスカラー量、速度は方向を持つベクトルになります。
「ドヤドヤ流束は流れに乗って輸送されます」「乗って」なので速度を掛けます。濃度Cの速度を掛けた単位は質量流速と同じです(p.1参照)。温度に速度を掛けた単位は、熱量流束と同じになりませんので、比熱と密度を掛けます。速度に速度を掛けたものは運動量流束の単位にならないので、この場合は密度を掛けます。単位を見ながら、計算式を立てることは「化学工学」の中で「次元解析」という手法でよく用いられています。「次元解析」については別途説明します。 小学生でも「は・じ・き」を使う際に単位を考えると公式を覚えなくても良いという話をしました。→ 単位のはなし
p.4 この辺から式が氾濫してきます。速度をベクトル表示にしたものが、上の式です。下の左の式もベクトル表示に書き換えました。右にある式は「ジワジワ流束」が濃度勾配や温度勾配に比例して、その比例定数をD、kあるいはμと書き表され式にしてあります。Dが拡散係数、kは熱伝導度、μは粘度と呼ばれているものです。係数の前に「−」が付いているのは、通常勾配は逆勾配になるからです。濃度や温度は高い方から低い方へ流れているので、距離が進むほど値が小さくなりますね。勾配は微小距離に対する微小変化ですので、微分で表します。yに対する変数がx1個の常微分のときはdy/dxのように書きますが、CやTに対する変数がx、yおよびzある場合は、δC/δxのように表します。
p.5 δC/δxのように表記すると式が煩雑になりますので、まとめて「∇(ナブラ)」という演算子あるいは勾配を意味する「grad」で書き直すとスッキリします。 濃度Cと温度Tはスカラー量ですので、添え字は0(ゼロ)、速度はベクトル量なので、3つの成分で表します。添え字は各成分1つずつです。テンソルは、このベクトル3つ分の成分を並べたもの3×3=9個のマトリクスで添え字は2つになります。
今日は、ここまでです。今日は、流束の式、その比例定数をイメージすることと、単位を意識することでイメージを確かなものしましょう。