昨日、「流束」のイメージできましたでしょうか? 今日は、「インプット−溜まり−消失=アウトプット」の関係式を用いて、偏微分方程式を作成する手順を説明します。
資料をご覧ください。 → 偏微分方程式その2
p.1 このページが理解できれば、P.2、3、6及び7ページは少し手直しするだけで作成できてしまいます。xyzの直交座標に直方体があります。直方体の底面(z=0)からz上に上がった平面に質量流束Jz/zがインプットし、さらに上にΔz上の平面から質量流束Jz/z+Δzがアウトプットします。Jzの後ろにある記号/zあるいは/z+Δzは、z及びz+Δzの位置を示しています。平面の面積がS、Δz移動するのに要する時間はΔtとすると、SΔtが微小体積(青と緑の平面で挟まれた薄い直方体の体積)です。溜まり(C/t+∆t−C/t)はこの微小体積にある物質濃度や温度変化分を示しています。今回消失分はゼロとして、「インプット−溜まり−消失=アウトプット」の式に代入します。 tに関する項を左辺、zに関する項を右辺に移項します。t及びzを無限小にすると微分方程式になります。流束Jzが濃度勾配に比例する式を微分方程式に代入して整理したものが、右下の式です。左がtによる1階微分、右辺はzによる2階微分になっています。
p.2 前ページの質量流束を熱流束に変えます。Jがqに、CがTに、Dがkに置き換わり、「ρCp」が定数として付加されます。
p.3 運動量流束の場合です。Jがτz、Cがvxに、Dがμに置き換わり「ρ」が定数として付加されます。
p.4 p.1~3の式を並べてみると類似していることがわかります。定数項を1つの文字にすると良く似た式になり、定数項の単位は[m2s]と同じになります。上述の微小体積に単位ですね。この式は放物線(y=x2)型と呼びます。形が似ているだけで、2乗しているわけではありません。2階微分ですので。この型の微分方程式を解く際には、真中以下に例を示したように、左辺は1個、右辺は2個の「境界条件」が必要になります。
p.5 3つの微分方程式の境界条件を例として書いておきます。
p.6 p.1~3は直角座標でしたが、ここは円筒座標の式を導きます。キュウリを冷蔵庫で冷やす例です。キュウリの中心の熱が半径rの方向に放熱していきます。また長さ方向をz軸とした場合、キュウリの長さL方向でも同様な熱流束が生じます。キュウリの内部での溜まりが青字で示す式です。p.1と同様に式を変形していきます。p.2の最後の2つの式を比較してみてください。1/rがついた式が余分に加算されています。 これは、半径rが増加する部分を補正する部分になります。
p.7 球状のスイカを冷蔵庫で冷やす場合の式導出です。手順はまったく同じです。1/rの代わりに(2/r)+(Δr/r2)となりますが、(Δr/r2)はゼロに収束します。最後の式は、円柱座標系の2倍になっていますね。rの拡がりが円柱より大きいことを意味します。
式の導出は面倒ですが、流れはわかってもらえましたでしょうか? コンピュータに計算は任せるにしても、原理は知っておいてほしいと思います。