「化学実習」の続きです。今回は「検出」ですが、金属の炎色反応を利用する「原子吸光光度計」や「ICPS(Inductively Coupled Plasma spectrometer)」についてです。 金属イオンが入った水溶液をアセチレンガスと共に燃やして励起環境にするかあるいはプラズマ内に噴霧された試料溶液中のイオンがエネルギーを貰って励起します。励起した原子は低いエネルギー準位に遷移する際に発光します。これが炎色反応ですね。発光に使われ吸収される光強度や発光そのものを検出するわけです。
資料ご覧ください → 検出
p.1 原子吸光の場合、例えばナトリウムが入った水溶液を燃やすとナトリウムイオンが励起されやすい状態になります。ここに励起光を照射するとナトリウムイオンが励起され、その後黄色の光を発します。ナトリウムイオン濃度が高いほど励起に光が使われてしまうので、使われなかった残りの光の強度を検知側で検出することになります。光を濃度分吸収してしまうので「吸光」と言います。
p.2 学校の授業では、金属イオンが溶けた水溶液に白金線を浸して、その後バーナーで燃やして炎色反応を観察したはずです。白金線は高価なので、代替法を説明します。メラニンという素材の台所用スポンジは耐熱性がありますので、これにメタノールに金属イオンを溶かしてしみ込ませて、火をつけると炎色反応をみることができます。赤や黄色はよく知られていますが、緑はあまり見たことがないでしょう。 以前のブログ「緑色の炎の滝が綺麗」で紹介しました。
p.3、4 「緑色の炎の滝が綺麗」で紹介したカラーファイヤーの作製方法を絵にしてみました。ステアリン酸はWebsiteから、ホウ酸は薬局、燃料用アルコールは薬局あるいはDIYストア等で入手可能です。大きなボウルに沸騰したお湯を入れて湯煎に使います。金属製の小さなボウル(取っ手があると良い)に燃料用アルコール、ホウ酸及びステアリン酸を適量入れて湯煎の上に浸しながら割り箸でかき混ぜます。透明になったら、湯煎から降ろして冷やすと白く固まりできあがりです。 これにチャッカマンで火をつけると緑色の炎で燃えます。全体的に熱で溶けてきたら容器を傾けて受けの容器にこぼすと緑色の滝となります。 夜見ると、とても神秘的な炎です。 なお、受けの容器は耐熱性の容器にしてください。 また、周囲には水でぬれた雑巾を用意しておいて、火傷や火事には十分ご注意ください。
p.5 上述のステアリン酸は固体です。炭素数が小さい時はギ酸や酢酸のように液体ですが、油状になりさらに炭素数が増えると固体になります。「酸」というと液体のイメージがありますが、そうではないのです。融点と炭素数の関係を右下にグラフにしてみました。ギ酸や酢酸は純度が高いと低温で固体になりますね。冬になると固まっています。ステアリン酸の融点は69.6℃ですので、上述のように湯煎を用いてアルコールに溶解させます。 脂肪族カルボン酸には、イソ吉草酸のように足の裏の臭いやペラルゴン酸のような加齢臭など不快臭の物質もあり、バターや母乳に含まれている成分もあります。ラウリル酸は、界面活性剤として歯磨き粉に入っています。
「検出」の話から、かなり脱線しましたが、検出の原理を体感してみるのもよいでしょう?