ピカソは、キュビスムの創始者です。それまでの西洋絵画は、1枚のキャンバスに「ある1つの視点から見えた景色」を写真のように正しく描くこと(遠近法)を基本としていましたが、キュビスムは、「物体の形をいくつかの面(キューブなど)に分解し、複数の異なる視点から見た形を、1つの画面の中に組み合わせて描く」という全く新しいアプローチです。先ず、1枚の絵をご覧ください。この絵は、何を描いているかわかりますか?「a」「o」「J」「X」といったアルファベットにそっくりな形を見つけることもできます。私は、角があるので、鹿かなと思いました。
では、10枚の絵をご覧ください。一番上が第1段階で、筋肉や陰影まで克明に描かれたリアルな雄牛でしたが、版を重ねるごとに情報が削ぎ落とされ、最終的にはわずか数本のシンプルな線だけで「雄牛の本質」を描き出す極限の抽象化に到達しています。最初の絵は11番目の絵になるわけです。この絵は、リトグラフで、油分の入った絵の具やクレヨンで描き、全体を水で濡らしてから油性インクをつけると、水が弾いた部分だけにインクが乗って紙にインクが転写されます。ただのスケッチでなく、面倒なリトグラフを用いて、試行錯誤を重ねているようです。プロフェッショナルは、自分が納得するまで作品と向き合っていますね。