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一つの表から色々な情報が

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めくるめく元素」(著者:宇田亮子 他 発行所:明日香出版)を紹介します。女性3名の化学研究者の執筆で、専門書とは違った趣向の元素の物語形式になっていますので、気楽に読めます。この本の中で「核図表」という耳慣れない単語が出てきましたので、調べてまとめてみました。

資料はこちら → 核図表

p.1 通常の周期律表は、原子番号原子殻内の電子数で周期的に並べられていますね。「核図表」は横軸が中性子数縦軸が原子番号でプロットされています。左上の核図表の赤枠部分を拡大したものが右上図です。の部分が一般的な周期律表です。例えば、原子番号1の水素は、中性子が1、2及び3の3種類が書かれています。水素、重水素、三重水素ですね。の部分が天然で安定な原子で、ボックスの下の数値は、天然存在比を示します。炭素C1298.93%炭素C131.07%が天然に存在することを意味します。青以外のボックスの原子は放射性物質でボックス下の数値は半減期を表しています。福島原発冷却水中のトリチウム(三重水素)半減期は12.33yとボックスに書かれています。半減期が12.33年であることを意味します。 左下の核図表右下の表を合わせてご覧くさい。「魔法数」は、2、8、20、28、50、82、126・・・であり、原子数中性子数魔法数が一致した原子核は安定しています。左下図の右上には日本人が発見した「ニホニウム」があり、中性子数126のPbの上の方には「安定な島」と書かれた領域があります。不安定な原子種の海の中に安定な原子種の島があると予想されています。

p.2 理研の仁科加速器科学研究センターのサイトに「核図表」の説明図がありますので、ご覧ください。魔法数安定の島の説明もあります。 原子の形には、ミカン・レモン・バナナ・洋ナシ型があるそうです。核図表を3次元的に表す、つまりZ軸をエネルギーにすると「ハイゼンベルクの谷」が見えてくるようです。エネルギーレベルが低い谷が安定しています。原子数を横軸縦軸にエネルギーにした断面で見ると、水素→ヘリウム→鉄のようにエネルギーが落ちてきて、その後またエネルギーが上昇していきます。恒星の中では水素が燃えてヘリウムになりヘリウムが燃えてと次々に原子番号が上がって鉄まで到達して安定化しますが、それ以上は燃えません。このような説明が書かれています。核図表には、周期律表にはない面白さがありますね。

核図表の説明図 → https://www.nishina.riken.jp/enjoy/kakuzu/index.html

p.3 縦軸をクォーク数にした核図表です。どのような使い方をするのか分かりませんが、量子レベルで色々なことが予測できるのでしょうね。

 

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