以前、「気の長い実験」「力をいれると硬くなるもの、柔らかくなるもの 知っていますか?」「水面を走れる?」「ごみで散らかった部屋はゴムと同じ?」のブログで、ピッチドロップ実験、ダイラタンシー、チキソトロピーあるいは水面を走るバシリスクを取り上げてきましたが、これらの特性を「デボラ数」で分類することができます。資料にまとめてみました。
資料はこちら → 面白い流体力学その6
p.1 デボラ数の定義は、「流体の緩和時間trと流れの変化の代表時間t0との比De = tr / t0として定義する」ですが、意味がわかりませんね。緩和時間は「力を与えた後、物質の変形が元に戻る時間」、代表時間は「観察時間」と読み替えると少し理解が深まります。デボラ数De<<1の時液体、De>>1のとき固体ですが、分子の緩和時間が一定値の場合、分母の観察時間の取り方でデボラ数が変化しますので、観察時間により、固体になったり液体になったりするわけです。観察時間t0 が極端に長く、 De≪1 となり液体になる事例が、コールタールの「ピッチドロップ実験」、マグマや氷山の動きが該当します。
p.2 逆に、観察時間が極端に短い場合に、固体になる事例です。バジリスクは、20回/秒のサイクルで水面を蹴ることにより、水が固体となります。片栗粉と水の混合物上で足踏みすると固体になり、足踏みを止めると、液化してずぶずぶと沈んでいきます。この反対に、マヨネーズは静置の場合固体ですが、力を加えると液体化して動き出します。容器を振ったり、逆さにすると最後まで使い切ることができますね。練歯磨きも同様です。せん断速度を瞬時に変えたときのレオロジーの特性を右上に載せておきます。
観察者の視点で、特性が変わるというのは面白いと思います。因みに、デボラは旧約聖書に登場する女性で、戦勝の際に「神の前に山々が流動した」と言ったそうです。固体の山が液体のように動いたことにちなんで、「デボラ数」と名付けられたそうです。