統計の本を眺めていて、いつもなら読み飛ばしてしまうところですが、「平均」の章を読んでみました。「平均」には、いろいろな種類があるのは知っていたのですが、改めて読むと新鮮ですね。今回は「調和平均」と「相乗平均(幾何平均)」について、まとめてみました。
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p.1 先ずは「調和平均」です。「harmonic mean」というくらいですから、音楽から来ているのです。ドの音が出る弦を張った時に、真中で押さえて片側を弾けば1オクターブ上のドですね。弦の長さを1とした時、1オクターブ上のドの弦の長さは1/2です。ソは弦の左から2/3のところを押さえて弾きます。ソは上と下のドの平均とすると、調和平均の式で計算すると2/3になります。同様にミは低いドとソの調和平均として計算すると4/5となります。 では、この調和平均はどのような事例で用いるのでしょうか? 能力が異なる共同作業の平均値を求める場合に使用します。 水槽に水がV入っている場合に、太いパイプと細いパイプから水を排出させます。パイプAは4時間で排出する能力。パイプBは6時間要します。 2つのパイプを用いたらどのくらいで排出できますか?という問題であれば、2.4時間と算出できます。 2つのパイプの排出能力の平均は?という問題の答えは、(4+6)/2=5時間ではないのです。調和平均で算出すると4.8時間で排出できるパイプCが正解です。 実際にこのパイプCが2本あれば2.4時間で排出できますね。
p.2 もう1題、調和平均の問題です。自宅から駅まで1,800mの距離です。往路は追風で20km/h(時)、復路は向い風で10km/hでした。この時の平均速度は?という問題です。 通常、往路・復路の所要時間を各々算出後、距離を所要時間で割って平均速度を算出しますね。 ダイレクトに算出するには、調和平均の公式で一発で計算可能です。 先ほどのパイプの排出能力は、水の体積、今回は距離は計算過程に含まずとも平均値が算出可能なことに気が付いて欲しいと思います。 本には書いてなかったのですが、改めて「そうなんだ」と思いました。 共同作業でスケールを気にせずに能力を見積れそうです。
p.3 相乗平均(幾何平均)の話です。経時的に利率が変わるような場合の平均値です。2つならば掛けて平方根、3つの場合は掛け合わせて立方根となります。1年目100万円、2年目250万円、3年目400万円の時、2.5倍、1.6倍とアップします。単純に相加平均をとると(2.5+1.6)/2=2.05倍となり、100×2.05=205万円、205×2.05=420万円となり400万円より20万円も乖離してしまいます。相乗平均√(2.5×1.6)=2倍とすると、100×2×2=400万円となり一致します。 このような比率の場合は、相加平均ではなく、相乗平均が有効です。
p.4 相乗平均は幾何平均とも呼ばれています。例えば、25×16の長方形があるとします。幾何平均√(25×16)=20となり、一辺が20の正方形が幾何平均であることがわかります。
p.5 相加平均と相乗平均の大小関係は図に描くと明白です。「方べきの定理」をご覧ください。ab=cdという関係があります。このcとdに√(ab)を入れると等式が成り立つことがわかります。 実際に相加平均≧相乗平均(幾何平均)になるかをExcelで計算してみました。円の直径を1としてaとbを変化させてみました。右上の表です。確かにそうなっています。
今回は、少し深堀してみましたが、今まで気が付かなかった知見が得られ満足しています。たまには、見直すことも大事ですね。