固有値の話に戻ります。量子論にも出現することは述べました。私は化学系出身ですが、学生の頃、物理化学の講義で「Schrödingerの波動方程式」という式がでてきたのですが、何のことやら皆目わからず何とか単位は取得しましたが、そのまま来てしまいました。何度か理解しようと試みましたが、いつも頓挫してきました。今回は、いつもより構えずに、とりあえず固有値が出てくる部分を読み流してみました。そうすると、以前のブログで固有値と固有ベクトルを算出した方法と類似しているのです。 では、先ず簡単なエチレン分子の波動方程式を解いて最小になるエネルギー準位を算出してみます。
資料はこちら → 分子軌道法
p.1 H^(ハット)はハミルトニアン演算子というもので、今回はあまり触れません。H^ψ=Eψという簡単な式がシュレディンガー方程式と言われるものです。この式、固有値と固有ベクトルの式によく似ていますね。両辺にψをかけて、全空間で積分します。E=の式に変形して、波動関数ψは2つの炭素原子の各々の波動関数Φの和であるとします。係数C1とC2はどのくらい寄与するかの比率です。左右対称の分子構造なのであとでC1=C2とします。 解いていく中で、積分値を記号SやHで表して、見やすくします。
p.2 Eを係数Cで偏微分して右下の行列式が0になります。
p.3 「Hückel法」の場合、安定したσ軌道は無視し、π軌道のみを考えます。クーロン積分H11をαと共鳴積分H12をβと書き改め、E=α+λβとすると行列式は固有値λの式になりますので、λの2次方程式を解いてλは±1となります。 この部分は以前固有値を算出した方法と一緒です。
p.4 λ=1のとき、E=α+β、λ=-1のとき、E=αーβとなります。これをエネルギー準位の図にしたものが、右上の図です。安定した軌道E1と不安定な軌道E2が存在します。C1=C2として算出すると√1/2が求まります。2つの炭素原子が√1/2ずつ寄与しているということですね。
いかがでしたか、今回式の導出は大変ですが、波動方程式を解いてエネルギー準位を算出する手法はわかりましたでしょうか? 昔、皆目わからなかったことが、少し前に前進したような気がしています。 まだまだですが。他のことを経験したことにより類似性があることに出会います。この感覚は物事を理解するのに大事であると思います。難しいこともいつかわかるようになるものと信じています。