「直感にだまされる」で紹介した「この複雑な世界を生き抜くための思考術 自分の直感にだまされないための8つのルール」(著者:キコ・リャネラス 発行所:青土社)の最初に、ウナギの話が登場します。ウナギは、大昔から人間に食べられてきた身近な存在でありながら、その繁殖や生態は長年完全な「謎」に包まれていました。若き日のジークムント・フロイトを含む多くの科学者がウナギの生殖器を探そうと解剖を繰り返しましたが、川にいるウナギからは一向に見つかりませんでした。ヨーロッパの川に住むウナギは、数年~数十年が経ち、ある日突然未知の本能に突き動かされて川を下り、大西洋を何千キロも横断して「サルガッソ海」へと向かいます。海へ出ると同時にウナギの身体は劇的に変化します。それまで機能していた消化器官は退化して消え失せ、代わりに生殖器官が成熟します。つまり、川にいる間のウナギは「まだ子供(未成熟)」だったため、いくら解剖しても生殖器が見つからなかったのです。ウナギはサルガッソ海にたどり着いて卵を産むと、二度と戻ることなくそこで一生を終えます。著者がこのウナギの話を最初に出した理由は、「一見シンプルに見える身近なものであっても、その背後には人間の直感や観察をはるかに超えた『複雑な現実』が隠されている」ということを示すためです。ウナギの謎を解くには、大西洋全体を視野に入れるような「広範なデータ」と「直感を疑う視点」が必要であると著者は述べています。ウナギの本能はどこにインプットされているのでしょうか? なぜ長旅して卵を生みにいくのでしょうか? サケもボロボロになりながら川を遡上していきますね。生き延びるため、困難を乗り越える遺伝子が必要ということなのでしょうか? 不思議です。