「比較すると面白い」で紹介した「生命はゲルでできている」(著者:長田義仁 発行所)に、ゲル中の水は凍らないという話があります。水が氷になる時に熱が発生し、融けるときは熱を吸収します。図をご覧ください。縦軸は熱量です。水を90%含むゲルは0℃付近にピークが観測されます。つまり、ゲル中の水が氷になっています。これに対して、ゲル中に水16%が含まれている場合はピークが認められませんので、一気に氷になることがありません。よく冷凍保存した肉は解凍すると柔らかくなると言われますが、氷ができることにより細胞が破壊されるためのようです。富士山の大沢崩れも、岩石中の水が凍ることにより岩石が破壊されて崩れています。生体中の水は凍結し難いようですが、臓器移植や生体の凍結保存の研究では、まだまだ課題が多く残されています。ちなみに、北極海の水は−3℃ですが、ここで泳いでいる魚には、グリコプロテインという1,2-エタンジオール(不凍液の主成分)に分子構造が似ている物質が細胞や血液中に溶けているので、凍らないで生きていけるようです。自然界に学ぶことは多いですね。
過冷却の実験 → https://www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/190301.php