「理系の読み方」(著者:大滝瓶太 発行所:誠文堂新光社)を紹介します。著者は、京都大学大学院博士後期課程を単位取得万期退学されています。大学時代は、熱力学や統計力学を専攻していたそうです。その後、広告会社の営業からフリーライターとなり、阿波しらさぎ文学賞を受賞し、ミステリー小説「その謎を解いてはいけない」などを刊行されています。上述の本の表紙には「ガチガチの理系出身作家が小説のことを本気で考えてみた」と書かれています。理系出身なので、数式や物理現象の喩えをイラストで説明されています。私も理系出身なので、親近感を覚えます。ただし難しい内容ではないので、ご安心ください。喩え話を一つ紹介すると、作者と奥様が食器棚に食器を片付ける際に、違いがあります。作者は、とにかく食器が食器棚に入れればよしとしますが、奥様は定位置に食器を置かないと気がすまないそうです。理系の方は、「テイラー展開」をご存知だと思います。テイラー展開は、ある関数f(x)がx=aの周りで、その点の微係数を使った項の無限和で近似できるというものです。f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+1/2!f''(a)(x-a)+1/3!f'''(a)(x-a)+・・・という式です。x=aの近傍では、右辺の第3項1/2!f''(a)(x-a)以降は微小な値なので、f(x)≒f(a)+f'(a)(x-a)で近似するというのが作者、奥様は可能な限り第3項以降も使いたいというスタンスです。この他にも、量子力学と古典力学の中間領域はどこなのかとか、フラクタル構造、ゲーム理論、エントロピー、超ひも理論などの理系単語が目白押しに登場してきます。この本の中で、著者が影響を受けた小説が紹介されていますので、早速図書館に予約しました。先ずは、3冊、「物理学者のすごい思考法」(著者:橋本幸士 発行所:集英社インターナショナル)、「これはペンです」(著者:円城塔 発行所:新潮文庫)と「銀河帝国の興亡」(著者:アイザック・アシモフ 発行所:東京創元社)です。読んで面白かったら、後日報告します。この他にも、エレベータが到着するまでの12秒間の思考を長編小説にしたニコルソン・ベーカーの「中二階」、主人公が死んだ瞬間から時間を逆戻しするマーティン・エイミスの「時の矢」、読む順序と時間が分かち難い関係性を持つフリオ・コルタサルの「石蹴り遊び」が紹介されています。興味を持ちましたら、どうぞ読んでみてください。
橋本幸士先生が巨大たこ焼きについて語る → https://www.youtube.com/watch?v=tUXoy6AGybg