「幻覚を見ている?」で、人間には青、緑及び赤の錐体を用いて色を認識しているという話をしましたが、認識していても表現する言葉がないと認識していないように見えてしまいます。日本でも、緑のリンゴを青リンゴ、緑の信号を青信号、青野菜などのように緑を青という言葉で表現してきました。古代人は、青を認識できなかったのか、表現する言葉がなかったのか、ホメロスの詩には「青」という言葉が見当たらないようです。日本人は虹の色を7色としていますが、6色や5色としている国々があるようです。
<虹の色>
7色=赤・橙・黄・緑・青・藍・紫
6色=赤・橙・黄・緑・青・紫
5色=赤・黄・緑・青・紫
5色=赤・橙・黄・緑・青
「しぼうみとは?」で取り上げたように、第6番目の味覚として「脂肪味(しぼうみ)」がありますが、言葉で表現しようとするとなかなか良い言葉がみつかりません。甘味であれば「甘い」、酸味であれば「すっぱい」と表現しますが、「脂肪味(しぼうみ)」はどのように表現したらよいのでしょうか? なかなか表現が難しいですね。 こんな実験もあります。カルシウムイオン濃度を変えたり、同じ濃度でもタンパク質と結合しているカルシウム溶液を飲んだ場合、濃度の違いは感じても、言葉では表現できないようです。誰かが、ミルクに似た味がするというとミルクの味のように感じてしまうようです。味や色などでは、ボキャブリーがないと、認識していても表現することができない訳です。我々は、認識しているのに、表現できていないことをたくさん持ち合わせているのかもしれません。