品質工学のわかりやすい参考書をいくつも書かれている長谷部光雄氏の「技術にも品質がある」(著者:長谷部光雄 発行所:日本規格協会)を改めて、読んでいます。株式会社リコー代表取締役の桜井正光氏が冒頭「発刊の序」を執筆されていて、面白いことを引用されています。 日本の品質管理の創始者的存在である西堀栄三郎氏は、常々、以下のことを言われていたそうです。品質管理の本質を捉えた文言だと思います。
- 検査課の強大な会社ほど、品質は良くない
- スタッフと称する部門に多くの人たちがいるほど、能率は上がっていない
- 作業標準や諸規定の設定のやかましい会社ほど、だらしない作業をしている
1は、品質が良くないから検査に多くの人がかかってしまうことになります。大元の製品設計や製造管理に問題があるということになります。2は、分業化のし過ぎや過剰な管理による問題だと思います。3は、監査や査察対応により必要以上に多くの作業標準や諸規定を設定することにより、証拠を残す文書作成に追われ、本来の作業が疎かになることを意味していると思います。 一個一個の作業をする度毎にチェックしていたら、作業が主なのかチェック作業が主なのかわからなくなってしまいます。作業に集中できなくなり、不安全作業にもなりかねません。
日本の製造業は、TQCやTQMの活動を通じて品質を向上させてきましたが、ISO9001、ISO13485、ISO14000あるいはリスクアナリシスの要求事項を遵守すべく、過剰な管理状態にしているのではないかと危惧しています。本来、品質や安全を向上するための作業標準設定なのに、目的の本質からズレていると思われて仕方がありません。さらに少子化や働き方改革も負担を大きくしていると思います。
品質工学を用いて、製品設計・製造設計で最適条件を設定→ 工程内では、MT法を用いてパラメータよりリアルタイムの予測・予防管理→ オンライン品質工学を用いて適正な検査間隔や校正頻度を設定→ 逸脱時にはT法を用いて原因究明を実施する。という品質管理手法を構築する必要があると考えます。