「分析バリデーション」その2です。本日は、「併行精度」と「室内再現精度」ですが、この部分が一番統計的要素があり、理解し難い部分になります。頑張って、雰囲気だけ掴んでおきましょう。
資料はこちら→ 分析バリデーションその2
p.1 本日の説明項目です。
p.2 2項目について、項目、実施方法、評価方法及び評価水準を表にしてあります。評価に用いる算出式を表の下に記載しておきます。式を見ただけで、敬遠されそうです。次ページ以降で、順に説明していきます。
p.3 分散分析を用いますので、概念を説明します。左上が概念図です。ブランク、因子A及び因子Bのデータとその範囲を水色、ピンク色及びオレンジ色の長方形で示しています。青線、ピンク線及びオレンジの水平線が各々の群内平均値です。ブランク、因子A及びB全てのデータの総平均値が緑色です。群内平均と総平均との差分(偏差)が各々の因子の効果になります。水色、ピンク及びオレンジ色の長方形の垂直方向の長さが群内の誤差になります。[総変動:(全てのデータ)−(全平均)の平方和」=[群間変動:(群平均-総平均)の平方和]+[群内変動:(データ)-群平均の平方和]の関係式が成り立ちます。そして、効果(群間変動)の分散VAと誤差(群内変動)の分散Veを算出し、その分散比(F値)が信頼区間の境界値より大きれば効果があることが検証できます。右側に実際の数値を記載しておきます。マニュアルで実施するばあいは、①~④の手順で進めますが、実際はExcelの分析ツールや統計ソフトを使用すると簡単に計算してくれます。
p.4 脱線ついでに、算出されたF値でF検定をしてみます。F値は19。分子と分母の自由度の算出方法を記載しておきます。群間と群内変動を算出する際に用いている平均値の数を差引いているところがポイントです。5%の有意水準で、境界値F0=9.55を算出しますが、Excel関数で簡単に求められます。F値19はF0=9.55より大きいので、「因子の効果があるといえる」と結論付けられます。
p.5 通常の分散分析は、上記のとおり効果確認に用いられますが、今回検証したいことは、以下の2点です。
- 偶然誤差が小さい → 併行精度が許容範囲内 ←相対標準偏差が2%以内
- 室内の種々の条件があっても、再現性のばらつきが許容範囲内 ←相対標準偏差が2%以内
試験の効果と誤差に関する分散と自由度を表にまとめました。自由度はこの式で求めます。併行精度は、誤差変動の分散Veより算出できます。室内再現分散は、併行分散と純粋な室内分散の和で定義されます。分散の平方根により併行精度と室内再現精度を算出します。
p.6 併行精度を、3種類の溶液で3回繰返して試験した結果を用いて計算してみます。一元配置分散分析を実施してVeと自由度が算出されるので、併行精度はVeの平方根で0.20となります。これを平均値の99.9で除した数値が相対標準偏差で0.20となり評価水準の2%以下なので、「適合」です。併行精度σの信頼区間も算出しています。
p.7 左下のように、試験日、試験者、装置及び試薬を変えて6種類のデータを計測します。各々2回測定しています。一元配置分散分析で解析します。結果は次ページをご覧ください。
p.8 下半分が一元配置分散分析を実施した結果です。この結果を用いて、上半分で室内再現精度、相対標準偏差及び信頼区間を算出しています。いずれも「適合」です。
分析バリデーションで難関な項目は、越えました。本日までのExcelシートは→ 分析バリデーションその2