本年度(2020年)のノーベル物理学賞の受賞者の一人であるロジャー・ベンローズ博士は、ブラックホールの特異点等の理論で受賞されました。ベンローズ博士は図形パズルの愛好者でもあり、博士の名がついた種々の図があります。幾つか紹介します。
資料をご覧ください。 → ペンローズ図形
p.1 左図が宇宙を表した「ベンローズ図」と言われているものです。青の部分が我々の宇宙で中心が現在、時間軸上が未来です。緑色が別の宇宙、白はホワイトホール、黒がブラックホールです。ギザギザの部分が特異点と呼ばれています。ホワイトホールから現在の宇宙へは一方通行で後戻りはできません。わかりやすい概念図です。右図は時系列に沿って観測者が宇宙を見ている場合のイメージ図です。ブラックホールの境界線より内側は光が出てこないので見ることができません。ここに描かれている「光円錐」は「時間は存在しない 本当?」で説明しました。
p.2 上記のベンローズ図も、図形パズルが好きなので思いついたのかもしれません。左図はペンローズ・タイルと呼ばれており、それまでの結晶学を変えるヒントになりました。以前の結晶学では、5回対称性を持つ結晶はあり得ないが常識でした。三角形、四角形あるいは6角形のタイルは敷き詰めても隙間は生じませんね。ところが五角形は不可能です。サッカーボールは五角形と六角形の組み合わせでできています。五角形だけの立体はできないのです。タイルの場合、太った菱形とやせた菱形を組み合わせれば、方向は異なりますが星形を含んで隙間なくタイルを敷き詰めることが可能になります。これがヒントになり、準結晶を発見したシェヒトマンがノーベル化学賞を受賞しました。ペンローズ博士は、あり得ない三角形や階段も図にしています。三角形は種々のデザインで見ることができますし、階段はエッシャーが絵にしています。エッシャーはペンローズと懇意にしていたようで、タイルの絵もたくさん描いています。
ペンローズ博士は、物理・数学・結晶学や芸術まで大きな影響を与えた方です。ノーベル賞受賞は遅すぎた気がします。ダヴィンチのように、秀でた人は多方面に好奇心を持って、それらがリンクして新しい物が産まれてくるようです。皆さんも、いろいろなことに好奇心を持って臨みましょうね。