以前実施した「化学実習」の中では、「簡易的な異物の同定」も体験してもらいました。 最近は分析機器も発達してきましたので、もっと簡単にできる方法は種々あります。 分析機器がなかった昔の人々は、いろいろ知恵を働かせました。その中から2つほど紹介します。
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p.1 製造工程内で「黒色異物」が発見されました。食品、医薬品あるいは半導体メーカーなどでは、注意した製造管理を行っていても起き得る逸脱事象です。あなたなら、どんな分析法を思い浮かべますか? 他にもあるかもしれませんが、私なら3つの可能性を追います。 無機物、金属あるいは有機物のパターンです。無機と金属は2つに分けてありますが、1つでも構いません。 2番目には、異物を直接分析する場合と酸や有機溶剤等に溶解させてイオン化あるいは溶液にして分析する方法に分けられます。最近は、直接分析できる機器も価格が安くなってきました。「ケイ光X線分析」も重宝な分析装置です。 化学系の学校出身者は、定性分析の実験はしましたか? 未知試料溶液から、その溶液にどんなイオンがあるかを調べていく方法です。 主に白色沈殿、黒色沈殿にしたり、アルカリで溶解するしないなどをみていきます。次ページはその覚え方です。
p.2 私が高校の時の参考書「チャート式 新化学」(著者:野村裕二郎、小林正光 発行所:数研出版)はいまだに参考にして見ています。この本には、語呂合わせで覚えるものが所々に出てくるのです。 その例をピックアップしました。
p.3 我々の先輩が考案された異物の同定法の一つです。 今なら上述のケイ光X線分析あるいは溶液にしてICPS(Inductively Coupled Plasma spectrometer)のような分析機器で同定可能ですが、高価な装置がない時代、「フェリフェロ反応」を利用して黒色異物が鉄かどうかを判定するのです。黒色異物が錆びであるとすると酸に溶かすと三価の鉄イオンFe3+になります。これにフェロシアン化カリウム溶液(黄色)を滴下すると反応して青いプルシアンブルー(別名:ベルリンブルー)が生成します。 青く色づくので、判定し易いのです。 このプルシアンブルーは青インクの成分です。
p.4 滅菌した製品に毛髪・虫あるいはカビが付着していました。さて、滅菌の前に混入したものか?、後から混入したものか? どうやって調べますか? ケガの消毒薬に用いる過酸化水素水を異物に滴下して気泡発生の有無を確認します。気泡発生がない場合は、滅菌前、気泡発生ありの場合は滅菌後と判定します。 死んで暫くはカタラーゼが残っていて過酸化水素を酸素と水に分解します。 いつも成功するとは限りませんが、初めて聞いたときは感心しました。
世の中、科学技術は進歩していますが、原理・原則で物事見ていくと面白い解決策が得られるかもしれません。