「星の王子さま」については、「いちばんたいせつなことは」で取り上げました。この本は、読めば読むほどいろいろな事項が隠されているようです。今回「星の王子さま88星座巡礼」(著者:滝川ラルドゥ美緒子 発行所:五月書房)を読んでいます。著者は、滝川クリステルのお母様でサン・テグジュベリの研究者です。最初のトピックスをいくつかまとめてみました。
資料はこちら → ハレー彗星
p.1 フランス語の表紙のタイトルの下に「著者によるデッサン」と書かれていて、人型の星が描かれていて、著者が星になったものらしいです。我が家にある絵本には残念ながら、この記述とデッサンはありませんでした。1章の最初にボアが獣を飲み込もうとしている絵があります。この絵は、次に出てくる象を飲み込んだボアに繋がりますが、1章の「1」でもあるようです。絵本には、別に「1」が書かれていますが、原著にはなく、この絵が「1」であることを示しています。 左下に「チビちゃん(あるいはぼっちゃん)」の肖像画が描かれていますが、著者は別の解釈をしています。肩にある星がオリオン座の2つの明るい星、腕のカフスにある小さな星印がチビちゃん、そして「ぼく」であるハレー彗星が描かれているとしています。オリオン座流星群は、ハレー彗星が放出するチリで、チビちゃんもハレー彗星がから出た隕石であるとしています。右上の絵は、天文学者が望遠鏡で星を観察しています。天文学者の鼻の下の黒丸が太陽、右に、金星、地球、火星、木星そしてハレー彗星の軌道と続きます。右下の「バランスの悪い象たち」の絵では、象の鼻が前の象の尻尾を掴んでいます。この象が太陽であるボールの周りを取り囲んでいます。水星、金星、地球、そして火星の順でつながっています。ボール内には三日月の形が見えます。ハレー彗星が太陽に接近した、1986年4月9日には日食があったそうです。本文中に、「ひつじが低い木を食べるというのは本当なの?」という表現が出てきますが、この「食べる」が「日食」を示しています。
p.2 Ⅴ章には、3本のバオバブの木を切ろうとしている赤い服の男がいます。これがヘラクレス、そしてバオバブは夏の大三角形のはくちょう座、こと座とわし座です。木は、包帯が巻かれており、3本とも結ばれています。フランス語で包帯はバンドで仲間とかグループという意味があります。
p.3 左上の図は、ぼくが椅子に座っている絵です。椅子はカシオペア座、草花は振り子時計が逆さになった形なので、時計座を表しています。右図では、シリウス、カノープス、宵の明星及びうお座が描かれています。
p.4 ジョウロが水瓶座、花がうさぎ座、オリオン座そしてマフラーがハレー彗星の尾として描かれています。
p.5 ハレー彗星の軌道と太陽の黄道そして星座が描かれています。1986年4月5日、祭壇座の上をハレー彗星が通り過ぎています。物語の中では、 「私は、若い裁判官の顔が光っているのを見てとても驚きました。 」と記述されていますが、裁判官と祭壇は関係しているので、祭壇座の上をハレー彗星が通り過ぎていることを表現しています。また、「わがままも限界に来て、…私はざっと書いたこんなデッサンを放り投げました。」という記述があり、放り投げた箱には3つの穴があり、これらは黄道上の火星、天王星そして土星を示しています。
まだ、全部読み終えていませんが、以上のように、この物語はハレー彗星が地球に接近した際の夜空の星や惑星を暗示した記述や挿絵が満載のようです。マフラーが描けれていないときはハレー彗星の尾が見えないタイミングと思われます。サン・テグジュベリの研究者だけあって、フランス語のニュアンスや表現に熟知されていて、謎解きの本になっています。興味がある方は、読んでみてください。今までの読み方と印象が変わるかもしれません。