「GR&Rの原理を理解してから使って!」を取り上げました。添付資料のp.28~30に「ゲージ性能曲線(GPC)」の説明がありましたが、説明不足でしたので、追加説明しておきます。
資料はこちら → ゲージ性能曲線
p.1 ゲージ性能曲線(GPC)は、測定システムの誤差が、繰返し性・再現性及び偏りで構成される場合、誤差量を見積ることにより、部品のある代表値毎に合格確率を算出してプロットした曲線です。100%合格するためには、計測値が赤矢印の範囲内に入ることが必要です。
p.2 具体的な例題を用いて、ゲージ性能曲線を描いてみます。[例題 上方限界値UCL:1.0Nm、下限限界値LCL:0.6Nmのとき、計測値が0.5Nm、0.7Nm及び0.9Nmが得られました。各々の数値が合格する確率を算出しなさい。計測値に偏りbが0.05Nm、計測値のばらつきがσGRR=0.05Nmある]としています。手順は、以下の通りです。
- 合格確率を求めたい代表値XTを基準化(標準化)して統計量を算出。この際に用いるデータをXT、UCLあるいはLCLから偏差bだけ小さい値に計測値(青の分布)のピーク(平均値)が来た場合を想定します。
- 上述の統計量と青の分布曲線で囲われた部分の確率をUCLとLCLについて算出して、その差を算出して、「合格確率」とします。
求めたいXTの位置を①~④のように変えて、合格確率を図として示しています。①~④には、UCLとLCLの添字が付いています。①UCLは、UCL付近での検査ばらつきの分布曲線、①LCLはLCL付近の検査ばらつきの分布曲線を示しています。分布曲線のピークはUCL及びLCLからbだけ小さい側に偏っています。分布曲線の標準偏差がσGRRです。合格確率は、統計量UCLと統計量LCLより求めた確率の差分です。統計量UCLと統計量LCLは、右の式で算出します。図中の青線の両矢印で示しています。XTを基準化により統計量とすることで標準正規分布にして確率を算出できるようにします。①~④の図は、XTの位置が異なっており、Φ(統計量UCL)とΦ(統計量LCL)の確率を各々、緑とピンクの領域で示しています。XTがUCL付近の分布曲線の左端に一致した時に、計測誤差はゼロになるので合格確率は100%となります。XTがLCL付近の計測誤差の分布曲線の右端に一致するところまでは合格率は100%ですが、XTがさらに左に位置するとピンク色の確率が増大してきます。④のように、XTが分布曲線の左端に一致した時にピンクの確率は100%となります。緑の確率は②の状態から100%ですので、合格確率は、100%-100%=0%となります。緑の外殻線(赤線)がゲージ性能曲線(GPC)となります。
p.3 p.2の③の図を拡大したものです。
p.4 Excelの計算結果とGPC曲線のグラフです。合格確率Paをプロットしています。UCLとLCL付近の計測誤差分布のピークをゼロとして±3σのばらつきの分布になり、この領域をGRR範囲と呼びます。Excelファイルを添付しますので、UCL、CLC、σGRR及びbの値を変えて、GPC曲線を描いてみてください。
Excelファイル → ゲージ性能曲線