久々に化学実験の話です。「振動する溶液」という話題でブログ「黒は包容力がある?」でも取り上げ、研修でも時々実演していました。この液は、攪拌することにより「透明↔青色」に色が変化します。可逆的に行ったり来たりする反応なので「振動」という言葉が入っています。 本日は、さらに面白い溶液を紹介します。
先ずは動画をご覧ください → https://www.youtube.com/watch?v=BZxGpwNMzts
この動画もどうぞ → https://www.youtube.com/watch?v=eXL6jhe8S-w
不思議ですね。なぜこのようなことが起きるかを資料にまとめました。
資料はこちら → ベロウソフ・ジャボチンスキー反応
p.1 上述の動画を一部ピックアップしました。 この化学反応を「ベロウソフ・ジャボチンスキー反応」と呼びます。
p.2 反応は複雑です。 右下の図が反応の流れです。当初、二人の化学者ベロウソフとジャボチンスキーが発見したときは、金属塩としてセシウム(Ce)塩を用いていたので、色は「透明↔黄色」でした。 反応式は、上の①~⑤あるいは下の①~⑤のように考えられています。臭素酸塩 が臭化物イオンにより、亜臭素酸→次亜臭素酸→臭素のように還元(酸化数が減少)していきますが、臭化物イオン が消失すると①の還元反応は停止し、②の反応が急激に生じ、酸化型金属(Ce4+)が増加して、溶液が黄色に変わります。その後、マロン酸が③~⑤と変化し、Ce4+が還元型金属(Ce3+)となり溶液の色が透明に変わります。また臭化物イオンが生成するので、また①の反応に戻ります。 この繰り返しです。 以前取り上げた振動する溶液は、攪拌して酸素を取り込むと反応が変化しましたが、今回の溶液は静置しておいても反応は進行します。 静置の場合、同心円のような模様になり、攪拌すると色が赤→緑→青→紫→赤のように変化します。
p.3 ベロウソフとジャボチンスキーが発見後、酸化還元指示薬として「フェナントロリン鉄錯体」を用いることにしました。酸化のとき青く、還元のときに赤くなるのです。3つのフェナントロリン分子が鉄Feと錯体を形成し、鉄が2価(還元体)か3価(酸化体)によって色が変色します。
p.4 茨城県立水戸第二高等学校の女子学生が、この「ベロウソフ・ジャボチンスキー反応」に関する新しい発見をして化学で権威があるJ. Phys. Chem.に論文を投稿した話です。先輩から引き継がれたデータより新しい発見をしました。 従前、色の変化は停止するものと考えられていましたが、マロン酸と臭素酸ナトリウムのある組成範囲では、振動が復活することを見つけたのです。最初のように赤↔青のような明確な色の変化はありませんが、色調が変化して振動することを確認しています。酸化還元反応なので、電極を溶液に入れて酸化還元電位を測ったものが3つのグラフです。△●〇が右のグラフの領域に書かれたものに対応しています。何れも最初は上下に振動していますが、△は高めに電位が安定、〇は低めに安定して振動しません。●の領域の場合は、振動が復活します。ただし、冒頭の振動とは異なった挙動を示しています。振動幅も狭くなっています。
動画はこちら → https://www.youtube.com/watch?v=kJoTL3fp-Wo
いかがでしたか? 最近、高校生が新規発見をしているケースがあるようです。今回の高校生の場合も、20時間以上も観察していないと発見できなかった事実です。根気よく突き詰めれば、もっといろいろなことがわかってくるかもしれません。 辛かったけれど、楽しかったとインタビューに答えていました。 好きなことを諦めないでやっていれば、新しい発見があるかもしれません。