「興味をそそる小説」で取り上げた「理系の読み方」(著者:大滝瓶太 発行所:誠文堂新光社)で紹介された本の中から、先ず3冊、「物理学者のすごい思考法」(著者:橋本幸士 発行所:集英社インターナショナル)、「これはペンです」(著者:円城塔 発行所:新潮文庫)と「銀河帝国の興亡」(著者:アイザック・アシモフ 発行所:東京創元社)を読んでみました。「物理学者のすごい思考法」については、既にブログでも取り上げました。「これはペンです」は読みましたが、タイプライター、DNAの塩基配列やアルファベットが印字された立方体の磁石でランダムな文章が叔父から送付された姪が解読するやり取りが続く難解な小説でした。読む人により何種類もの解釈が生じることを意図しているのでしょうか? 「銀河帝国の興亡」はまだ1巻の途中ですが、面白く読み進んでいます。心理歴史学者セルダンが帝国の衰退を予言し、阻止するために銀河辺境の惑星テルミヌスの銀河再興の拠点ファンデーションを構築していくというアシモフの代表作です。帝国は、科学技術の継承を怠るために衰退していきますが、セルダンはそれを見越して、科学技能集団をテルミヌスに移住させて、「銀河百科事典」の編纂を進めます。この小説を読んでいて、我が国の製造業における技術伝承の衰退危機になぞらえて読んでいました。町工場には、日本人にしかできない職人芸的な技術があるのですが、後継者がいなかったり、機械に置き換わったりすることで、廃れていってしまいます。例えば、成形技術を外注に頼るようになると成形技術に熟知した自社の社員がいなくなり、製品仕様が狭められという制約が生じてしまいます。独創的な形状の製品は生まれなくなってしまうでしょう。ものづくりを知らない経営陣が陥入りやすい傾向だと思います。日本の製造業が同じような状況になってきています。技能伝承を大事にする会社は今後も息が長い経営ができていくものと思います。